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「原子力発電所」ってどうやって再稼働するの?電力会社に聞いてみた(前編)

2023.09.08

玄海原子力発電所

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第27回のテーマは「原子力発電所の再稼働」。実は日本では東日本大震災後、既に2023年8月現在で11基も再稼働している原子力発電所。「そういえば、どうしたら再稼働ってできるんだっけ?」と疑問に思ったConちゃんが、電力会社の担当者に聞いてきました!

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Conちゃん、どうしたら原子力発電所が再稼働できるかを知る

2011年以降、一時すべての稼働を止めた原子力発電所。2023年8月現在で11基の原子力発電所が再稼働している。

岸田首相は2023年夏以降、原子力規制委員会の主要審査を既に通過している7基について再稼働を進める方針を示しており、8月に高浜発電所1号機が再稼働した。Conちゃんは、「震災後に停止した原子力発電所って、どうやったら再稼働できるんだろう?」と考えた。

ということで、今回は九州電力の原子力発電所に話を聞きに行きました。

玄海原子力発電所01

2人が所属しているのは、佐賀県東松浦郡玄海町にある九州電力の玄海原子力発電所と佐賀県唐津市にある玄海原子力総合事務所。佐藤さんは原子力発電所の保守点検を、眞﨑さんは地域とのコミュニケーション活動をそれぞれ担当している。

Conちゃん

玄海原子力発電所02

佐藤「2012年に日本の原子力発電所は一時すべて稼働を止めたけど、2015年に鹿児島県にある九州電力川内原子力発電所が、国の策定した新規制基準の下で初めて再稼働したよ。それ以降、再稼働しているのは現在11基だね」

玄海原子力発電所03

佐藤「福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえて、原子力発電所に関する新しい安全基準である『新規制基準』を国が策定して2013年7月8日に施行されたんだ。玄海原子力発電所は2013年7月12日に、このようにして新規制基準に適合させますっていう申請をしたんだ。具体的に言うとね、3・4号機の『原子炉施設設置変更許可申請※1』、『工事計画認可申請※2』、『保安規定変更認可申請※3』を一括して行ったんだ。その後、それぞれの許可・認可を受領し、発電所が新規制基準にきちんと適合しているかの確認を受けた後、3号機は2018年3月25日に、4号機も2018年6月19日に発電を再開したんだよ」

※1 原子炉施設設置変更許可申請:原子炉の基本的な設計や安全対策の方針について許可を得るための申請
※2 工事計画認可申請:詳細な設計について認可を得るための申請
※3 保安規定変更認可申請:発電所の運営ルールに関する認可を得るための申請

 

Conちゃん、再稼働への安全対策に感心する

Conちゃん

玄海原子力発電所04

佐藤「玄海原子力発電所では、福島第一原子力発電所事故を教訓として、発電所の設備(ハード面)と運用(ソフト面)の両方の面でさらなる安全対策に取り組んできたんだ。例えば、『炉心損傷の防止対策』。これまでも、原子力発電所の燃料を冷却するための常設のポンプを複数台配備していたけど、万一、重大な事故が発生して、その常設のポンプがすべて使用できない場合でも、燃料を冷却できるように、移動式のポンプ車などを敷地内に配備して冷却手段のさらなる多様化を図ったんだよ」

玄海原子力発電所05

佐藤「『放射性物質の拡散抑制対策』もしているよ。万が一、原子炉格納容器が破損して放射性物質が放出した場合に備えて、破損箇所へ放水し、放射性物質が大気に拡散するのを抑えるための放水砲や、放水時に放射性物質が海に拡散するのを防ぐためのシルトフェンスというものを新たに配備しているね」

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佐藤「想定した最大津波の高さは6mなんだけど、発電所の敷地は11mの高さにあるから、安全性に影響がないことを確認しているし、さらには、万一に備えて重要な設備のある建物の屋外に通じる扉は浸水しない扉にしているよ。また、想定される最大の基準地震動を踏まえた、さまざまな耐震対策も実施しているし、最大風速100m/sの竜巻を想定した対策として、安全対策に必要な資機材を守るための保管庫や竜巻防護ネットも設置しているよ」

玄海原子力発電所07

佐藤「それに万が一、重大事故が発生した場合の対策もしているよ。事故の対応要員として、中央制御室の当直員を含む、50名を超える要員が24時間体制で発電所内と発電所近くに待機しているんだ。いつでも事故に速やかに対応できるよう、日頃から繰り返し訓練も行っているよ」

 

Conちゃん、地域に住む人たちの思いが気になる

Conちゃん

玄海原子力発電所08

眞﨑「九州電力の理解活動は、フェイス・トゥ・フェイスによるコミュニケーションを基本としているの。“お客さまの声”をお聴きして、ご意見、ご質問に丁寧にお答えしながら、九州電力の思いや情報をわかりやすくお伝えしようと、『訪問活動』『発電所見学会、説明会』などに積極的に取り組んだんだよ」

玄海原子力発電所09

眞﨑「『訪問活動』では、玄海原子力発電所の安全性向上の取り組みについて理解いただけるよう、再稼働前の2017年に、玄海町と隣接する唐津市の鎮西町、肥前町、呼子町にある8,000戸以上の地域の皆さんを社員が訪問して、玄海原子力発電所の安全対策について説明させてもらったの。また、玄海3号機や4号機の新規制基準への適合性が確認された際には、発電所から30km圏内と佐賀県内の全区長を訪問して説明したんだよ」

玄海原子力発電所09

眞﨑「『発電所見学会、説明会』では、地域の皆さんに安全対策や訓練状況について実際に見てもらうことで、理解を深めてもらったの。説明会では、佐賀県、長崎県、福岡県の3県の11市町で、自治体主催の住民説明会に参加、ほかにも地区集会や商工会といった諸団体の会合の場にも出席して、説明させてもらったんだよ」

玄海原子力発電所10

眞﨑「再稼働にあたっては、私たちが安全性を確保することはもちろん、地域の皆さんに安全対策などを知っていただき、安心してもらえることが何よりも重要なの。その思いからこうした取り組みを行ってきたし、今もその思いは変わらないよ」

原子力発電所が再稼働するためには、安全対策の強化はもとより、地域の皆さんに理解いただくなど超えなければならないことがたくさんあった。玄海原子力発電所は再稼働したけれど、再稼働後の今はどんなことをしているんだろう? 次回後編でConちゃんがリポートします!

>後編に続く


取材協力:九州電力 玄海原子力発電所
https://www.kyuden.co.jp/genkai_index.html

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もっと知りたい!エネルギー基本計画⑦ 原子力発電(1)再稼働に向けた安全性のさらなる向上と革新炉の研究開発(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)