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風が吹かなきゃ電気代が上がる!? 世界のエネルギー事情を知る専門家に聞いてみた(前編)

2022.09.28

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第23回のテーマは「エネルギーと安全保障」。「最近の電気代の上がり方は異常! ロシアとウクライナの戦争のせい? それとも電力会社が勝手に値上げしたせい?」と憤ったConちゃんが、その理由を専門家に聞いてきました!

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Conちゃん、電気代の上がり方に憤る

エネルギーから生活必需品まで、値上げラッシュに悲鳴をあげる日本経済。国民は家計のやりくりに苦心し、耐える生活もズルズルと……。それに加えて、今年の夏と冬の電力ひっ迫の可能性が、さらに日々の暮らしに重くのしかかってきている。

そんな大変な状況にもかかわらず、一向に良くなる兆しが見えない事態に、Conちゃんは「何かのっぴきならない理由があるはずだ」と考えた。

ということで、今回はエネルギー情勢に詳しい専門家に話を聞きました。

Conちゃんヒートポンプ01

金田先生は、エネルギー分野のシンクタンクである株式会社ユニバーサルエネルギー研究所の代表を務める人物。世界のエネルギー情勢に精通し、精力的に国や地方自治体の政策立案や、企業の経営支援を行なっている。以前は日本のエネルギーの歴史を教えてもらった。

>>前回の記事はこちら『「日本のエネルギー政策」ってどうなの? エネルギーの歴史を振り返ってみた(前編)

金田「イギリス、ドイツ、スペインなどのヨーロッパ主要国が、近年、環境問題への配慮から主力電源を火力発電から風力発電に切り替えてきたんだ。ところが2021年の夏から秋にかけて、風の量がものすごく減っちゃったんだよ」

金田「足りない分を賄ったのが、天然ガスを使った火力発電。結果、ヨーロッパ中の国々が天然ガスを欲しがった。そうなると価格が高騰するよね? この天然ガスをたくさん持っているのが、あのロシア。ヨーロッパで使われている天然ガスは、40~50%がロシア産なんだ」

金田「日本が使う天然ガスのうち、9%はロシア産だよ。一つの国にエネルギー資源を10%も依存しているのは大変なこと。だから、ヨーロッパだけの話ではないのはわかるよね。それに、天然ガスだけで収まればいいけれど、そこで終わらないのがエネルギー資源。天然ガスが足りなくなれば他に需要が移るわけで、石油や石炭にも波及していったんだ」

金田「価格がいくらになっても海外から資源を買わざるを得ない日本は、価格高騰の影響を大きく受けるんだよ。原材料が高くなれば、当然販売価格も上がるよね。これが最近の電気代が上がった理由の一つなんだよ」

 

Conちゃん、今後のヨーロッパ情勢がすごく気になる

金田「原子力発電も石炭火力発電もやめると宣言しているからね。だから、ロシアの天然ガスに頼るしかなくなってしまったんだ。でも、今回のウクライナへの侵攻を目の当たりにして、ロシア依存のデメリットを今更ながら痛感させられている状況だね」

金田「イギリスは、再エネを中心に使うエネルギーを自由に選択できる電力自由化を強く押し出して、再エネを推進してきたんだ。自由っていいかもしれないけれど、再エネがうまくいかなくなったら、高い資源を高く買うしかなくなる。つまり、高騰の影響を大きく受けてしまったんだよ。そのおかげで電気代やガス代が6倍に……。国民の不満が爆発して、暴動まで起こったんだよ」

金田「フランスは、実は日本と同じように資源がほとんどない国。だけど、再エネではなく原子力発電の技術を磨き続けてきた。そのおかげで自国の電力を安定してつくり続けられるし、今ではヨーロッパ中に電力を供給して儲けるほど余裕を見せているよ」

 

Conちゃん、「原子力=危ない」という考え方は間違いかも……と思う

金田「もちろん他の意図もあったのかもしれないけれど、もし本当に原子力発電所を破壊しようとしたのであれば、ヨーロッパは今より重大な事態になってるはず。だけど、そうはなっていない。放射能が漏れたりしたら、自分の軍隊がダメージを受けるからね」

金田「そうだよね。戦争を想定した安全対策まで考えていたら何も作れない。豊かな暮らしを維持することも不可能になってしまうんだよ。本気で安全対策を徹底するなら、シェルターの中で暮らさなければならないかもしれないね。そんな我慢続きの生活はできるかな?」

金田「それに、エネルギーの中でも電力は本当に特殊で、使用量と発電量を常にピッタリ一致させないといけないんだ。もしバランスが崩れて、使用量が発電量を上回ってしまうと一気に停電する。上限を超えた後にちょっと調整できるようなものではないから、広い範囲が一瞬で停電してしまうんだ」

日本の電気代の値上がりは、戦争以前に“風”が影響していたことに驚いたConちゃん。でも、値上がりよりもむしろ、日本のエネルギーが足りなくなることの方が心配になってきた。どうすれば切り抜けられるんだろうか。これからの日本がどこを目指していくのか、 次回後編でConちゃんがリポートします!

>後編に続く


取材協力:金田武司

株式会社ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役。工学博士。東京工業大学 大学院 非常勤講師。八戸市地方再生政策顧問。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員。世界エネルギー会議(WEC)委員など歴任。

★さらに「日本のエネルギー」について知りたい方はこちら!
2021−日本が抱えているエネルギー問題(前編)
2021−日本が抱えているエネルギー問題(後編)