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「ジオ・ラボ号」で全国へ! NUMOが伝えたい地層処分の第一歩

2022.05.23

NUMO広報部小沢愛恵01

【今月の密着人】原子力発電環境整備機構(NUMO) 広報部 小沢愛恵(28歳)

原子力発電を利用することで発生する、いわゆる「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物の最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(以下、NUMO)。そこで「高レベル放射性廃棄物とは何か?」「地層処分とは何か?」を子どもから大人まで広く知ってもらうため、ジオ・ラボ号という展示車両を活用し、全国各地をめぐる広報部の小沢愛恵さんに、誕生の背景や仕事への想いを聞きました。


地層処分をわかりやすく教えてくれるジオ・ラボ号誕生

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高レベル放射性廃棄物の存在や、その処分方法を多くの人たちに伝えるため、2013年からジオ・ミライ号という地層処分模型展示車が全国を回っていました。しかし、老朽化に加え、手で触れる展示方法や見学時間の長さから、コロナ禍の影響を受けて引退。新たに2021年11月にデビューしたのが「ジオ・ラボ号」です。

地層処分とは高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋めて処分する方法のこと。現在、北海道の寿都町(すっつちょう)・神恵内村(かもえないむら)で地層処分場の選定に向けた調査が進められています。この地層処分の事業を、日本で唯一担っているのがNUMOなのです。

つまりジオ・ラボ号は、日本唯一の地層処分を伝える展示車。広報部の小沢愛恵さんは4~5人のメンバーと一緒に、全国をめぐっています。

小沢さん「ジオ・ラボ号の中に入ると、大画面で見るアニメと壁面展示が見学できます。地表から地下300メートル以上深いところに建設する高レベル放射性廃棄物の処分場とはどんなものなのか、放射性物質を長期間閉じ込めておける地下の特性とは何かを、わかっていただけるようなつくりにしているんです」

ジオ・ラボ号の展示スペースはあえて薄暗く、壁面は地層のようなデザインにしています。室内に入ると没入感が生まれるようで、子どもたちから「おお~!」という歓声が上がることもあるとか。

ただ、新型コロナウイルスの感染対策で車内での滞在時間を短くしたため、デビュー当初は伝えたいことがしっかりと伝わるかどうか不安もあったそうです。

小沢さん「もともとジオ・ミライ号では見学に20分ほどかかっていましたが、情報量をギュッと圧縮しましたし、内容も難しいので本当に伝わるのか不安もありました。でも、あるご家族が壁面展示を熱心に読んでいる姿を見ていたら、これで大丈夫だと確信しましたね。ジオ・ミライ号は今のご時世に合わせて世代交代。10年近く働いてもらって本当に感謝しています」

 

子どもから大人まで。教えるたびに教えられる日々

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NUMOの広報部はジオ・ラボ号と全国をめぐるほか、イベントやお祭り、ショッピングモールにブースを出展するなど、地層処分の説明を各地で行っています。さまざまなイベントに参加する中で、ものすごく詳しい子どもに会ったことがあるそうです。

小沢さん「正直ビックリしてしまって。家族で地層処分について会話すると聞いて、さらに驚きました。私は就職活動のときに初めてこの問題の存在を知ったくらいですし、そのときでも話題にしたかどうか。難しい話だからといって避けるのではなく、家族で話をする。本当にすごいなと思いました。私の方が知らなかったらどうしようって、ちょっと焦りもありましたね」

イベントに出展すると、「問題なのはわかるけれど、どうすればいいのかわからない」「必要だと思うけれど、地層処分場を家の近くに造ってほしくない」など、賛成でも反対でもない意見を多く聞くそうです。

小沢さん「あるときに、少し長くお話をさせていただいた方がいました。私の説明を聞きながら、その方も自分が思うことをたくさん話してくれて。最後に『少しずつでも地層処分のことを知っていただいて、多くの方からご意見をいただくことが大切なんですよね』とお話ししたら、『そういう考え方もあるよね』と。納得した感じではなかったのですが、その時に、互いに思ってることを話して、互いに聞くことは、ものすごく大切なことなんだなと実感しました」

まずは「地層処分」という言葉を覚えてもらいたい。頭の片隅にでも残してもらえたなら、インターネットやテレビ、新聞で見たときに少し気にしたり、自分から情報をキャッチしてみたりしてほしい。そうしたアクションを少しでもとってもらえたら、と小沢さんはイベントのときに考えているそうです。

小沢さん「自分から情報発信をするところまで進んでもらえたらなんて、なかなか難しいですよね。地層処分に関わることは、詳しい人だけで進めていい話ではないと思いますし、この問題については1人でも知っている人が増えることこそ重要なんです。私たちの活動を通じて、知るきっかけになれればうれしいですね」

 

地層処分を知らない人たちの橋渡しに

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地層処分への理解を少しでも広げようと、日々活動を続けている小沢さんですが、学生時代からエネルギー業界を目指していたわけではありません。就職活動の時期に、両親から教えてもらったことが直接のきっかけだったそうです。

小沢さん「詳しく知らないまま就職説明会へ行き、『高レベル放射性廃棄物』や『地層処分』の話を聞いたとき、友達との会話で一回も出たことがないことに気が付いたんです。こんな大事な話なのに、私の周りには知ってる人がいないかも! この問題が世の中にまったく浸透していない!! と強く感じました」

自分自身がまったく知らなかったことを、同じように知らない人たちに伝えられる橋渡しになりたいと、進むべき道を決めました。もちろん今も当時抱いた想いは変わりません。ただ、説明会で抱いた危機感は、使命感に変わりました。

小沢さん「『日本で唯一、NUMOだけが担う事業』。就職活動時の説明会で聞いた言葉です。今、イベントなどでご意見を頂戴するたびに、その使命や責任の重さをひしひしと感じています」

時には美容メーカーなどが出展する女性向けのイベントに出展することもあるそうです。地層処分というテーマはその会場ではやや異色ではあったものの、参加者がアンケートでNUMOの出展内容について回答してくれたことがありました。

小沢さん「『説明を聞いたことが、地層処分に関するテレビ番組を見るきっかけになった』と回答してくれたんです。ああ、よかったと思いました。最近ではニュースで見聞きする機会もあり、言葉を知っている方は増えてきたのかなって印象があります。私たちにとって、それはすごく大きな一歩なんです。賛成や反対の意見を持つのはその先でもいい。まずは少しだけでも知っていただきたいんです」

地層処分は、「100年事業」とも呼ばれるほど時間のかかるもの。次の世代、その次の世代も必ず知っておかなければなりません。

小沢さん「より多くの世代の方に、より多く知ってもらうことが重要なんです。既にある問題であり、処分はどうしても必要なこと。この2つを必ずお伝えするよう気を付けています。地層処分の問題が遠い将来の話ではないことに、気が付いていただけるように。それが説明をする者として、重要な任務の1つなのかなと思っています」

 

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■原子力発電環境整備機構(NUMO)
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