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地下深くに眠るエネルギーを探し出せ! 再エネで注目の地熱発電所づくりにかける想い

2022.01.21

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【今月の密着人】九州電力株式会社 エネルギーサービス事業統括本部 火力発電本部 地熱調査グループ 倉山侑也さん(32歳)

世界各国が脱炭素社会を実現させるために歩みを進める中、日本にとって大きなカギの一つとなるのが「地熱発電」です。実は、世界第3位の地熱資源量を誇る日本。そこで今回フォーカスしたのが、国内で最も地熱発電の発電量が多い九州電力に勤める倉山侑也さんです。発電所づくりのために倉山さんが奔走するのは、地元の自然と人を思う熱い想いがありました。


狙うのは地下3000mの熱水と蒸気!

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火山地帯にある高温な地中の熱エネルギーをもとに、電気を作り出す地熱発電。世界有数の火山大国である日本では、大きなポテンシャルがある発電方法として知られています。

最近では、脱炭素社会を目指し、2030年までに地熱発電施設の数を倍増させる目標を政府が掲げるなど、注目が集まっています。

そんな地熱発電ですが、発電所を1つ作るのには、なんと10年以上もの歳月がかかります。その理由を九州電力の倉山侑也さんは、自身の仕事でもある「地熱資源の調査」にあると言います。

倉山さん「地熱発電では、マグマによって熱せられた高温の地下水と蒸気を利用します。その地下水がたまっている場所を『地熱貯留層』と呼ぶのですが、地中深くにあるため、簡単に見つかるものではありません。それを探し出し、資源として使えるのかどうかを評価していくんです」

発電所の候補地探しで重要となるのが、フィールドワーク。国が所有するデータから目星をつけ、現場の状況を実際に確かめに行きます。

倉山さん「温泉地で硫黄のにおいがするように、地熱資源がある場所も特有の徴候があります。そうした成分によって地面が変質していたり、特徴的な岩石があったり、現地に行くと細かなヒントが見つけられるんです。ただ、そこまで行くのは体力勝負。多くは山の奥地にあるので、登山スキルは欠かせません」

いくつもの候補地から適切な場所を絞っていき、ようやく1カ所見つかるかどうか。まるでトレジャーハンターのようです。

倉山さん「さらに難しいのが、実際に掘ってみないと本当に地熱資源があるかわからない点です。温泉なら数百メートルで出ることもありますが、地熱貯留層があるのは1000~3000メートル。資源が見つかっても、規模や自然環境への影響といった調査が必要になりますし、国や自治体、地域の方々などの理解を得ていかなければなりません。そうしたことを十数年かけてすべてクリアし、ようやく地熱発電所が建設できるんです」

 

自然のことを考えた地熱発電所を造りたい

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学生時代にエネルギー関係の仕事に興味を持ち、熱工学を専門に学んでいたという倉山さん。生まれ育った九州の電力会社である九州電力に入社を決めたのは、東日本大震災がきっかけでした。

倉山さん「当時は九州にいましたが、その後の混乱の中で、普段何気なく使っている電気のありがたみがすごく身に染みたんです。入社後に発電所に勤務する機会があり、実際に電気をつくる立場になると、電気のある生活が当たり前ではないことをより実感しました。目立たない存在だけれど、ないと困る。そんな縁の下の力持ちとして地元に貢献できることにやりがいを感じています」

その後、現在の地熱調査グループに配属されると、地熱発電の魅力に引き込まれていきました。

倉山さん「私は鹿児島県出身で、ずっと桜島を見ながら育ったこともあり、火山が大好きです。火山は地熱エネルギーの根幹。そうした地球が持つ大きなエネルギーをうまく利用して発電ができるのは、地熱発電の魅力だと思っています」

また、地域とのつながりを強く意識するからこそ、その場所が育んできた自然や美しい景観を残すことを第一に考えています。

倉山さん「自然環境は、できる限り維持したいんです。開発ありきで進めていくのではなくて、地域の皆さまの理解や協力を得られるような環境でつくっていけるのが理想です。ただ、建設するのに有望なエリアは国立・国定の自然公園が多いのも事実。地熱発電は二酸化炭素の排出量削減やSDGs(持続可能な開発目標)の観点からもメリットは多いですが、地域の自然環境にしっかりと目を向けていかなければならないと思っています」

 

日本の地熱発電を世界へ!

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再生可能エネルギー推進の気運が高まる中、今後、技術力や発電量、経験値で国内随一の地熱発電企業である九州電力が培ってきたノウハウは、世界から求められる可能性があります。

倉山さん「当社グループは日本最大規模となる八丁原発電所(大分県)を含む全8施設の地熱発電所を九州で運営し、長年安全かつ安定して電気を供給してきました。その実績と、これまでに開発してきた技術力が最大の強み。これを九州だけでなく、国内外に広げていきたいです」

実際、インドネシアにある世界最大規模のサルーラ地熱発電所では、九州電力の技術が生かされています。さらに、2020年10月には福島県柳津町の猿倉岳(さるくらだけ)地域で地熱調査に着手するなど、続々とプロジェクトが動き始めました。

倉山さん「地熱発電は天候に左右されませんし、昼夜を問わずに安定して発電できます。さらに、化石燃料を使わないので二酸化炭素の排出量が圧倒的に少ないなど、メリットの多い発電方法です。特に日本は地熱資源に恵まれているので、有効活用していくべきと賛同してくださる方々も増えたと感じています。今、とても注目を集めていますが、これからも焦らず、地道に続けていくことが大切だと思っています」

倉山さんがそう考えるのには、これまで九州電力の地熱発電の礎を築いてきた先輩たちの存在があります。

倉山さん「大分県の八丁原発電所と大岳発電所は50年以上の歴史があって、地元の方々からの信頼を得られているだけでなく、町のシンボルのような存在として親しんでいただいています。それは電気だけでなく、発電に使った高温の蒸気や熱水をハウス栽培や住民の方の暖房用に提供するなど、エネルギーを余すことなく地域のために利用できるように、当社の先輩方が長年続けてきた努力のたまものだと思うんです。私が関わる発電所も、そういう存在になってくれたらうれしい。そのために、これからも地域の自然と人を大切にすることを第一に考えていきたいです」

 

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八丁原発電所

噴出試験

 

■電気事業連合会・SDGsの達成に向けた地域共生の取り組み
https://www.fepc.or.jp/sp/social/

■九州電力-地熱発電
http://www.kyuden.co.jp/effort_renewable-energy_geothermal.html