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空気中の熱って再エネなの? 家から始める脱炭素「ヒートポンプ」のすごさを専門家に聞いてみた

2022.05.11

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第22回のテーマは「ヒートポンプ」。日本が進めている「カーボンニュートラル」って、応援はしているけど「特にやることはないなー」と考えていたConちゃんが、暮らしの中だからこそできる脱炭素の方法を教えてもらいました!

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Conちゃん、日本の「電化率の低さ」に驚く!

 

いろいろ大変な地球のために、世界が目指すカーボンニュートラル(二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)な社会。

2030年までにたくさん減らす!2050年には達成!みたいな目標は聞いたことがあるけど、実際のところ本当にできるのだろうか。

その実現に、これから「ヒートポンプ」というものがすごく貢献するらしい。

 

Conちゃんヒートポンプ01

 

そんなにすごいのなら、きっと日本のカーボンニュートラルがどれくらいうまくいきそうなのかも知っているはず。

 

 

ということで、今回は一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センターに話を聞きに来ました。

 

 

梅辻「カーボンニュートラルを実現させるためには、国や企業だけが二酸化炭素(CO2)を出さないように頑張ればいいのではなくて、国全体で『電化』を進めなければならないって言われているからだよ」

 

 

梅辻「電化って『動力や熱などを電力の利用によってまかなう』ことだよ。ガソリン車が電気自動車に変わるようなもので、もっと簡単に考えてもいいんだ。例えばキッチンのコンロや、お湯を沸かす給湯器など、ガスや灯油などの燃料を燃やして使っていたものを電気で動く機器に置き換えれば、それは立派な電化なんだよ」

 

 

梅辻「そう考えると、電化って昔から誰もがしてきたことじゃない? それに、エネルギーって聞くと『電気』をイメージしがちだけど、実は暖房や給湯などの『熱』が大きな割合を占めているんだ」

 

 

Conちゃん、「ヒートポンプ」のすごさを知る!

 

 

梅辻「熱は熱いところから冷たいところへ移動する性質があるんだ。また、空気はギュッと小さく圧縮すると温度が上がり、逆に力を緩めてふくらませると温度が下がる性質もあるんだよ。わかりやすいように、ヒートポンプを空気入れで再現してみるね」

 

 

梅辻「モニターに映っているのは、空気を送り込めるガラス管のサーモカメラ映像だよ。空気を入れるとガラス管の中の空気が圧縮されて、どんどん温まる。実際には、このように発生した熱を別の空気や水などに移して、僕たちは利用しているんだ。これがヒートポンプの基本的な原理なんだ」

 

 

 

梅辻「ヒートポンプを利用している代表的な家電がエアコン。エアコンの場合は、空気の代わりに『冷媒』と呼ばれる物質が室内機と室外機をつなぐ管の中にあって、空気入れの役割を『コンプレッサー』という機械が、Conちゃんの役割(動力)を『電気』が担っているんだ」

 

 

梅辻「灯油ストーブの場合、『1』のエネルギーを持つ灯油を燃やすと、得られるのは『0.8~0.9』の熱エネルギー。でも、最新のエアコンだと『1』の電気エネルギーで得られるのは『7』の熱エネルギー。もちろん気温によって効率は変わるものの、氷点下でも機能するっていうのがヒートポンプのすごいところなんだよ」

 

Conちゃん、「ヒートポンプ」に親しみを感じる

 

 

梅辻「熱の移動を利用しているから、温めるだけじゃなく、冷やすこともできるんだ。エアコンと冷蔵庫は、基本的に全部ヒートポンプ。あと、お風呂や洗面台やキッチンの給湯もヒートポンプ式があるよ。さらに最近のドラム式洗濯機の乾燥機能は、省エネモデルとしてヒートポンプ式になっているね」

 

 

梅辻「オフィスビルの空調や温水プール、私の地元の北海道だと雪を解かすために道路を温めるシステムに使われているね。今後は工場や農場でも利用できないかと期待されているし、実は街中を見回してみるといろいろなところにあるんだよ」

 

 

梅辻「今、ヒートポンプで水を85℃まで温められるようになったから、さらに技術が進んで100℃にできれば、ほかにももっと利用できる場所が増えるかもしれないんだ」

 

 

Conちゃん、ヒートポンプが「再エネ」だと知る!

 

 

梅辻「毎日、天気予報で『気温』って見るでしょ? さっきも話したとおり、ヒートポンプが利用するのはこの空気中の熱、つまり『大気熱』なんだ。空気を温めるのは太陽。日が昇るたびに温まる。それを電気で数倍の大きさにして人が使えるようにしているんだ。だから日本の法律でも、太陽光や風力と同じ再生可能エネルギー源の一つに定められているんだよ」

 

 

梅辻「気温はだいたい10~30℃くらいだよね。この熱をそのまま何かに利用するのは難しいけれど、使えるようにできるのがヒートポンプのすごいところ。しかも、気温0℃からでも熱は集められるんだ。40℃くらいのお風呂のお湯を、貴重なガスで約1700℃の火を起こして沸かすって、ちょっともったいない気がしない?」

 

 

梅辻「最初に言ったとおり、国レベルで進める発電所や企業の脱炭素化だけではカーボンニュートラルは難しいんだ。実現させるために家庭レベルの電化を進める必要があるなら、ヒートポンプは一役を担えるはずだよね」

 

 

最後に梅辻さんは、「家電を買うときやマイホームを購入するときに、ちょっとだけ『ヒートポンプ』や『電化』を気にかければ、それだけで環境保全の一助になるんだよ」と言っていた。

「カーボンニュートラル」や「脱炭素」って聞くと難しく感じてしまうけれど、どんな家電を使うかを気にしたり、買い替えたりするだけで地球のためになるなんて。

まずは、いつの間にかヒートポンプ式になっているという自動販売機で飲みものを買って、春の陽気を感じてみようと思ったConちゃんでした。

 


取材協力:一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター

「ヒートポンプ」と「蓄熱」に関する国内唯一のナショナルセンター。ヒートポンプ・蓄熱システムの普及促進と技術向上に向けた事業などを積極的に展開している。
https://www.hptcj.or.jp/

 

電気事業連合会エネルギー・環境教育支援サイト エネラーニング
動画「THE POWER OF ELECTRICITY~電気の力で、未来をつなぐ~」
File.001 エネルギー×地球温暖化 ~水族館~

(前編)https://www.youtube.com/watch?v=gUGhU3wKT24
(後編)https://www.youtube.com/watch?v=hzEz0nuqDCc