日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 前回に続き、第11回は「原子力発電のごみ」の地層処分プロジェクトを進めるNUMO(ニューモ:原子力発電環境整備機構)からお届け。処分場がどこになるのか、さらにその先は? Conちゃんがお伝えします!
Conちゃん、どこで処分すべきか頭を悩ませる!
NUMO広報部の実松由紀さんに説明してもらったおかげで、地下に秘められた能力が、「原子力発電のごみ」であるガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)の処分に強みを発揮することがわかったConちゃん。
実松「地層処分のための処分場は、地下と地上に施設が必要になるんだけど、地下施設は6~10平方キロメートルほどを見込んでいて、一辺が羽田空港の滑走路と同じくらいの長さになるの。でも、地上は1~2平方キロメートルほどだから、地下施設の5分の1くらいですむんだよ。それを地図に落とし込むと、この赤い点の大きさなの」
実松「ガラス固化体4万本以上埋めることができる処分場を、日本の中に1カ所造る計画なんだよ」
実松「まだ決まっていないんだ。今はたくさんの方々に全国で説明して、『そもそも地層処分とは何か』ということについて理解を深めてもらっているところなんだ」
実松「今後、もしも地層処分に関心を持っていただける地域が出てきたら、その先にある文献調査、ボーリングなど主に地表から行う概要調査、地下の調査施設における精密調査へと、地域の方々の声をしっかりと伺いながら、段階ごとに進めていくの。その後、施設の建設、操業、そして最終的には地上施設を撤去して更地に戻すんだよ」
実松「原子力発電所を今動かすか止めるかは、また別の話かな。既にガラス固化体は日本にあるでしょ? だから、最終処分場はどうしても必要なんだ。それに、そもそも使用済燃料をリサイクルする際に発生するガラス固化体は、地下に埋められるようになるまで30~50年の冷却期間が必要なの。でも、だからといってのんびりしていいわけではないから、私たちの世代で解決できるように動いているところなんだよ」
実松「今は青森県の六ヶ所村と、茨城県の東海村にある施設で一時保管されているよ。さっき言ったように、出来たばかりのガラス固化体は高温で放射能レベルも高いから、冷却期間が必要なの。それに、この冷却期間で放射能レベルは80%も減るんだよ」
実松「次の世代に負担を残さないためにも、原子力発電による電気を利用してきた私たちの世代で、できるだけ早く道筋をつけるのが使命だと思っているよ。それに今、原子力発電のごみ処分は、世界のみんなでもっと協力して進めていこうっていう動きもあるんだよ」
実松「2019年から『最終処分国際ラウンドテーブル』っていう国際会議が開催されているの。原子力発電を利用する14カ国が参加して、これまでの経験や知見を伝え合いながら、これから進むべき方向を話し合ったんだ。世界の国々が原子力発電のごみ処分の課題を、協力して解決していこうと約束したんだよ」
実松「世界の人たちが協力して進める中で私たち世代が頑張るのは当然なんだけど、最終処分の取り組みは、若い人たちにもぜひ知ってほしいんだ」
Conちゃん、地層処分に故郷を想う!
調査、処分場の建設、さらには処分場の閉鎖まで、長期にわたるこの計画。
みんなで考えなければならないことはたくさんあるけれど、一歩ずつ進めているんだなーと思ったConちゃん。
実松「これから将来を担う世代にはこの問題に触れてほしいし、日本の課題として、今一緒に考えてほしいからね」
実松「それに、最近の学校の教科書って見たことある? 実は、今の子どもたちっていろいろな教科でエネルギーについて触れているんだよ」
実松「理科でエネルギー、社会でもエネルギー、家庭科でも環境やごみの問題でエネルギー。日本がエネルギー資源に乏しいってことだったり、火力、原子力、再生可能エネルギーを組み合わせるエネルギーミックスという考え方だったり、それらを自然と学ぶ機会が多いの。むしろ、今の社会人世代より詳しいかもしれない」
実松「だから、最終処分もその中の課題の一つとして考えてほしいんだ。いろいろな発電方法があって、それぞれメリットとデメリットが必ずあるってことを」
実松「ちなみに、学校に説明に行くと、東日本大震災を覚えていない10歳ぐらいの子からは、『CO2をたくさん出すのに、なんで原子力じゃなくて火力発電所をいっぱい使うの?』って聞かれることもあるし、大学生ぐらいの子からは、『最終処分、どうして早く進めないんですか?』って声もあったりする。自発的にSNSなどで広げている子もいるんだよ」
実松「もちろん全員が全員、そういうわけではないけどね。頭では理解して大事だって思っても、処分場が地元に来たらって考えると……っていうのが正直なところだと思うの。でも、それをビジネスチャンスと捉えて地元をアピールすればいいっていう意見も出てくるんだよ」
実松「実際に、処分場の建設が決まっているスウェーデンのエストハンマル市では、インフラの整備や中小企業の支援、科学教育に力を入れるといった、処分場ができることで生まれる地域発展のメリットが挙げられているの。ハイテク技術や研究者が集まる工業地域になるかもしれないし、観光地になるかもしれないって」
実松「他にこういった施設がないから、やっぱり不安に感じるのも当然だと思うの。でも、まずは最終処分について知ってもらって、日本社会全体の課題として捉えてほしい。そして、みんなで考えていきたいんだ。その方法や安全性といったさまざまな疑問には、私たちが一つ一つ丁寧に答えていこうと思っているよ」
電気を使うと出てしまう「ごみ」の正体、その先にあった処分方法の今。話を聞いてみたら、既に決まっているということ、そしてこれからすべきことについてもちゃんと考えられていることがわかった。
実松さんは、「処分場をつくるまでには、NUMOの本社もそこに移転するの。故郷として共生していくんだよ」と言っていた。
この国を故郷と思っているからこそ、電気を使った後のことも真剣に考えていかなきゃダメだなーと感じたConちゃんでした。
取材協力:原子力発電環境整備機構
高レベル放射性廃棄物等を安全に処分する地層処分の実現に向けて事業を行う日本で唯一の事業体。英文名「Nuclear Waste Management Organization of Japan」から、略称はNUMO。各地で、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会を行っている。グーモは、イベントや公式サイトなどに登場するマスコットキャラクター。
https://www.numo.or.jp/
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「高レベル放射性廃棄物処分問題」を学生と考えてみた(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)
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