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「いつも通りに電気が届くことが大事」沖縄電力・糸数奈里子さん

2019.06.21

【今月の密着人】沖縄電力株式会社 電力流通部 給電指令所 系統システムG 糸数奈里子(いとかずなりこ)さん(24歳)

毎日の暮らしになくてはならない電気。発電所から私たちの手もとまで無事に届くよう、陰では電気の通り道を管理・監視するシステムが常に動いている。沖縄電力に勤める糸数奈里子さんは、そのシステムを守るために日々奮闘する若手社員。知識や経験がほとんどなかった入社当初から、数々の仕事を経験したことで生まれた自信とやりがい。電気がいつも通り届くとき、その裏側には彼女の働きがある。その仕事とは、どのようなものなのだろうか。


日々勉強!生活に欠かせない電力の仕事で地元・沖縄に貢献したい

今回密着したのは、沖縄電力で入社3年目となる糸数奈里子さん。発電所から電気がスムーズにいきわたるよう管理する電力流通部に所属し、給電指令所という電力流通における“脳”ともいえる場所で働いている。

2017年4月に新卒社員として入社して以降、同部署に勤務する彼女。にこやかな表情とやわらかい言葉遣いが人柄をうかがわせる。


社内では普段、作業着を着用。仕事の話を聞くと、いっそう真面目で勤勉な姿勢が伝わってくる

観光地として有名な、那覇市内の国際通り近くで育った。両親共に理系ということにも影響されてか、大学では電気工学を専攻する。

糸数さん「理系の教科が得意だったこともあり、現代の生活に欠かせない電力業界で働けたらかっこいいかも、と思ったのが高校生のころです。もともと、将来は地元の沖縄で働きたいという思いが強かったので、その前に少しぐらいは県外に住んでみようと思い、静岡の大学に進学しました」

4年間を県外で過ごしたことで、地元への愛情は一層強まったという。大学での学びを活かしながら地元に貢献できる方法を考えた結果、高校時代に描いた将来像そのままに、沖縄電力を志望し、入社した。

糸数さん「大学時代に専攻していたのは、電気の中でも、送電線や高電圧などの技術に関わる内容でしたが配属は系統システムG(グループ)という部署です。ここは発電所から変電所、変電所から町中まで電気が送られていく過程を管理・監視するシステムをつくる部署なのですが、正直、システムのことは全く分からない状態で…。配属が決まったときに初めて、サーバーの本を読んだくらい未知でした」

全く知らない領域に飛び込むのは、きっと大きな不安もあったことだろう。それを拭い去るため、実践していることはあるのだろうか。

糸数さん「毎日の勉強ですね。まだ入社3年目なので当然かもしれませんが…。仕事中には、上司や先輩からいただく助言を必ずメモに取ります。業務中に全てを覚えることはできないので、メモに残しては空いている時間に整理して、インプットしています」

 

大仕事を終えたときに得られた安堵と達成感

糸数さんが勤める系統システムGは、発電所、送電線、変電所など「電力系統」と呼ばれる設備群を統括する自動給電システムのメンテナンスを担っている。私たちの手もとまで電気が届くためになくてはならない電力系統。全ての設備が正常に動き、安定的に電気が届けられるよう、常時、管理・監視している。

糸数さん「使う電気の量は、季節によってはもちろん、一日の中でも大きく変化するので、24時間365日、常に監視して、使う量と同じ量を発電しています。自動給電システムというのは、こうした使う電気の量の変化を常に監視し、変化に合わせて各発電所での発電量を調整するためのシステムです。系統システムGでは、システムの保守点検や現場設備の変更に合わせて、データメンテナンスとシステム改良を行っています」


普段の業務は、デスクワークがメイン。デスク近くの廊下から見える景色がリフレッシュポイント

実際の電力系統の設備を一部変更した場合、それに合わせて必ずシステムも改修しなければならない。糸数さんが所属する系統システムGが、その都度対応しているのだ。

糸数さん「例えば、ある送電線の容量が、10万キロワット(kW)から20万キロワットに変わるとします。その場合、その送電線を監視するシステムも、10万キロワットから20万キロワットに設定を変更するんです。そのままにしておくと、システム上では容量より大きい電流が流れていると認識され、常に異常があるという状態になってしまうんですよ」


給電指令所にあるシミュレータ室で、システムの改修箇所が正しく稼働するのか試験を繰り返す

普段はデスクワークが多く、勤務する給電指令所の事務所から出ることはあまりないそう。その中でも、強く印象に残る仕事があるという。

糸数さん「およそ1週間。システムをチェックするために、シミュレータ室にこもったことがあります。設備の一部で複雑な工事があり、それに伴ってシステムのメンテナンスをしたのですが、普段はあまり実施されないような接続の工事で、システム側の改修も大がかりに。一体どうすればうまくいくのか本当に悩んでしまって…何度も何度も試験を繰り返しました」

現場にある設備との整合を取りながら、他のシステムとの連携も考慮し、さらに実際にこのシステムを扱う運用者が操作しやすい形を考えなければならなかったという。サーバーの勉強から始めた新入社員には、かなりハードルの高い仕事だったのだろう。

糸数さん「自動給電システムだけでなく、連係する他のシステムの仕様も理解しなければならなくて、かなり苦戦しましたね。ですが、難しかったぶん、同時に多くのことを学べたと思います。試験を全て終えて、設備が運転を開始したときは、安堵と共に大きな達成感を味わいました」


試験を終えて運用担当部署に引き渡したときは、「あとはお願いします!」と、達成感でいっぱいになったそう

自動給電システムのメンテナンスが主な仕事だが、時には設備監視用のカメラやセンサを保守点検するために、変電所を訪れることも。

糸数さん「変電所などでは、設備に異常がないか監視するシステムが常時動いているのですが、それを管理するのも私たちの仕事の一つです。反応があったときは、実際に現場を訪れて確認しています。カメラが海水による塩害でサビたり台風の影響で水が入ったり、トラブルの原因は沖縄ならではのものも多いんですよ」


実際に現場を訪れて、監視システムの状態をチェックする


変電所の状態を監視するカメラも実際に見て、不具合がないかを調べる

 

自動給電システムのことなら任せてほしいと言えるように

まだまだ勉強中という彼女だが、これからの目標があるという。

糸数さん「学生時代に専攻していた送電線や高電圧。それらに関わる部署には、いつか携われればと思っています。でも、今は系統システムGの仕事にやりがいを感じているので、もうしばらくは今の部署でいろいろなことを学んでいきたいですね」


先輩から割り振ってもらうさまざまな仕事から、多くの経験を積ませてもらっているという糸数さん

学生時代から理系一直線で進んできた。一方、プライベートでは古の時代に思いを馳せる。

糸数さん「休みの日は友達と遊ぶことが多いですが、一人で史跡めぐりにも行きます。歴史自体というよりは、その空気を感じるのが好きなんですよ。最近(2019年2月1日~)、首里城公園で『御内原(おうちばら)』という本殿の奥のエリアが新しく公開されたので、さっそく行きました。県内で一番好きな場所は、神の島と呼ばれ、琉球王国時代から島の人々によって神事が行われる『久高島(くだかじま)』です。訪れると、神聖な気分になりますね」


首里城の城壁前にある礼拝所 「首里森御嶽(すいむいうたき)」の前で

仕事の中でさまざまな経験を積み、多くを学んできた。力不足を感じることももちろんあるが、何にでも挑戦することを心掛けているという糸数さん。

糸数さん「『自動給電システムのことなら何でも聞いて!』と言えるようになりたいです。これまでの経験を活かして、今後も日々成長していきたいと思います」