日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第26回のテーマは、前回に引き続き「日本と世界のエネルギー事情」。前編では、ヨーロッパの国々のエネルギー事情を聞いたところ。後編では、アメリカやアジア諸国の状況とともに、今後の日本が進むべき道をConちゃんがお伝えします!
Conちゃん、アメリカのエネルギー自給率に憧れる
電気料金が上がる裏には、そもそも日本の「エネルギー自給率」の低さという課題があることを知ったConちゃん。そのため、日本は世界情勢の変化に大きく影響を受けてしまう状況にあることを前編で教えてもらった。
>前編はこちら『カギになるのはエネルギー自給率! 世界のエネルギー事情を専門家に聞いてみた』
それは日本だけでなく世界の国々も同様であり、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けたヨーロッパの国々は、国のエネルギー政策の転換はもとより、家庭レベルでも大打撃を受けていることを知った。
ロシア産の天然ガスに依存していたヨーロッパの国々はわかるけれど、ほかの地域の国々はどうなんだろうか。
松本「アメリカは化石燃料の割合が非常に大きいものの、資源大国だから一次エネルギー自給率は100%を超えてとても高い。でも、アメリカが2021年に輸入した原油や石油製品に占めるロシア産の割合は7%あって、ロシア・ウクライナ情勢を受けて、それを禁輸したの。だから、その分を国内での増産や、別の国からの輸入で代替する方針に転換したんだ」
松本「原油の供給量が減ることへの懸念から先物価格が高騰してしまって、ガソリン価格が上昇。車社会のアメリカにとって、国民生活に思いっきり跳ね返ってしまったんだ」
松本「アメリカは50州のうち3分の1は化石燃料推進、3分の1はクリーンエネルギー推進、3分の1はニュートラルと分かれているの。だから、それによって電気代はバラバラ」
松本「一方で、バイデン大統領は2022年8月に『インフレ抑制法』という法律を通したんだ。これは再エネや原子力発電、グリーン水素製造、電気自動車製造などの気候変動対策やエネルギー安全保障に対して、10年間で50兆円規模の支援策を講ずるというもの」
Conちゃん、アジアの変化に気づく
松本「2022年8月に四川省で電力不足になったというニュースがあったけれど、四川省は省内の電力供給量の85%を水力発電に依存していたの。原因は雨不足。一つのエネルギー源に依存していたという意味では、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けたヨーロッパ諸国と似たようなことかもしれないね」
松本「大きな特徴として、今中国では10基ほどの原子力発電所を建設しているんだよ。新設で10基というのは恐らく世界で一番。だから、原子力発電による脱炭素電源にシフトしていくんじゃないかな」
松本「現在の中国は太陽光発電や風力発電の導入量がダントツで世界一。これからも国内の再エネを増やしていくだろうし、合わせて原子力発電も天然ガス火力も増やす。それによって石炭火力を減らしていく動きになっていくだろうね」
松本「国内に原子力発電所を造って、なおかつ海外にも輸出していく戦略が一つ。風力発電でも風車タービンの生産はヨーロッパに並ぶぐらいになっているし、太陽光パネルのモジュールは生産量・販売量ともに7割以上の世界シェア。圧倒的に中国が席巻している状況なんだよね」
松本「人口増加と経済成長によってASEAN地域のエネルギー需要は2050年までに2020年に比べて3倍に増加する見通しなんだ。経済発展によるエネルギー需要量の増大もあって、まだまだ安価な石炭火力が中心。逆に言うと、脱炭素化を目指す現代社会においては、石炭の割合が高いのが課題だね」
松本「特に再エネを推進していて、日本の企業も太陽光発電所などの事業で東南アジア諸国に入っているよ。それでも、電力の需要を賄うために、例えばベトナムでは新しく石炭火力発電所も造られているの。これには日本企業などが参画しているんだよ」
松本「経済発展するとともに人口も増加するし、エネルギー需要も増加する。そうなれば、温室効果ガスの排出量も自ずと増える。東南アジア諸国はこれから、それに対応できるインフラ整備や資源輸入方法を確保していかなければならないってことだね」
Conちゃん、日本は海外に依存することをやめるべきだと思う
松本「ドイツを例にすると、エネルギー自給率は約29%で、ロシアへの依存度も高かったから、今回のような危機的状況に陥ったんだよね。ロシアからの輸入をやめたとしても、結局は別の国から輸入しなければならないでしょ」
松本「実は2010年には、日本のエネルギー自給率は20%以上あったの。それ以前も20%から30%を維持していた。でも、福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電所が稼働を停止して、エネルギー自給率は大きく下がっているんだ」
松本「発電量の規模から言うと、安全性が確認された原子力発電所の再稼働が非常にインパクトは大きいと思うよ。それに、2030年に再エネの割合を36~38%の割合にするという目標を掲げているから、その目標に向けて着実に再エネを伸ばしていくということもとても重要だね」
松本「世界が推進する脱炭素化も実行しながら、まずはこのエネルギーミックスの目標に向けて着実にしっかりやっていくってことが私は重要だと思うよ。電力を使う側の取り組みとして、節電も大切だね」
松本「今回のロシア・ウクライナ情勢で、エネルギーが世界を動かすものだということは多くの人が理解したと思うんだ。エネルギー資源の調達と確保、そして電源をいかにバランスよく持てるか。国内に資源がほとんどない日本にとって、それが大事になる。私達ってすごく便利な生活を享受しているよね。でも、実はエネルギー自給率が13%しかない。そのことはしっかり意識してほしいな」
最後に松本先生は、「電力の需要と供給が厳しい状況は、もうしばらく続くと思います。だから、節電できるところはしっかり節電して、エネルギーを大事に使うことも考えてほしいですね」と言っていた。
真冬の暖房はどうしても消せない。けれど、例年よりは家の中でも厚着をして少しでも節電できるように、とできることから始めようと思ったConちゃんでした。
取材協力:松本真由美
大学在学中からTV朝日の報道番組のキャスター、リポーター、ディレクターとして取材活動を行い、その後、NHK BS1ワールドニュース・キャスターとして番組を担当。2008年より東京大学での環境・エネルギー分野の研究、および教育活動に携わり、NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事も務める。
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今こそ知りたい!日本のエネルギー事情―「エネルギー白書2022」(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)