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カギになるのはエネルギー自給率! 世界のエネルギー事情を専門家に聞いてみた(前編)

2023.01.30

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第25回のテーマは「日本と世界のエネルギー事情」。ガソリン代や電気代などのエネルギー価格が上がっている日本。「これって日本だけ?」と疑問に思ったConちゃんが、日本と世界のエネルギー事情を専門家に聞いてきました!

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Conちゃん、電力価格の高騰の原因を探る

電気代が高い……。電力の需給ひっ迫にエネルギー資源価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢のニュースが流れるたびに、また電気代が上がるかも、と心配になる。

確かに需要に供給が追いつかなければ、価格が上がるのはわかる。でも、なんで世界の変化にここまで日本の家庭が影響されるのだろうか。そう感じると同時にConちゃんは、「これって日本だけ?」と考えた。

ということで、今回は世界のエネルギー事情について専門家に話を聞きました。

Conちゃんヒートポンプ01

松本先生は、キャスターとして活躍した後、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を研究する専門家。2008年からは、東京大学で環境・エネルギー分野の研究、および教育活動に携わっている。

松本「その通り。火力発電の燃料となる天然ガスや石炭はほとんどが海外からの輸入。だから、日本のエネルギーの一番の問題は『エネルギー自給率』の低さかな」

松本「2021年度の実績で日本のエネルギー自給率は13.4%。だから、87%は海外からの輸入燃料に頼っているの。そうした中、コロナからの経済復興、ロシアによるウクライナ侵攻などが続き、燃料価格が世界的に高騰。これが海外からの輸入と化石燃料に依存している日本にとって大きな課題になっているんだよ」

松本「それに、エネルギー自給率を高める方法の一つである原子力発電所は、厳しい新規制基準によって再稼働が思うように進んでいないし、老朽化した火力発電所の休廃止が増えていることも影響しているだろうね」

松本「ロシア・ウクライナ情勢の影響もあって、各国、大小問わずエネルギー戦略の転換があったの。じゃあ、ここからはいろいろな国のエネルギー事情について見ていこうか」

 

Conちゃん、ヨーロッパの方針転換に驚く

松本「まずは、分かりやすく影響があった代表として、ドイツ。ドイツのエネルギー自給率は29%(2021年)なんだけど、化石燃料の海外依存度が非常に高いのが大きな課題。なおかつロシアへの依存度も高いから、燃料不足による電力の需給ひっ迫の懸念が出てきたんだよ。そこでドイツが打ち出したのは、ロシアに替わる発電燃料の調達先の確保と原子力発電所の稼働を延長すること」

松本「当初は、現在稼働している3基を2022年末にすべて廃止して脱原子力発電を完了する予定だったんだよ。でも、ドイツ政府は2022年10月に、この3基を2023年4月まで、緊急時の予備電源として稼働することにしたんだ」

松本「電気・ガス料金も高騰していて、一般家庭や企業への対策としては、2023年から段階的に電気・ガス料金の価格上限制を導入する方針。暖房需要が高まる冬に家計や企業の負担を直接和らげることを打ち出しているんだ」

松本「実際に、産業用の電力料金の2022年7月分と2021年を比較すると、約9割も上がっているんだよ。国全体が大変な経済危機に陥りつつあることを考えると、エネルギー価格の変動の影響ってとっても大きいよね」

松本「8割の値上げってすごいよね。もともと、一般的な家庭での年間の光熱費は大体1971ポンド(32万円)。それが、年間3549ポンド(57万5000円)になったの。毎月4万8000円の電気・ガス料金を払うことに。年間で25万5000円も増えるって、家庭には大打撃だよね」

松本「これもロシア・ウクライナ情勢の影響だね。エネルギー価格の高騰が家庭レベルに影響した一番わかりやすい事例だと思うよ。それでイギリスは、2022年9月末で閉鎖が予定されていた2つの石炭火力発電所を、電気料金を下げるために2023年3月まで稼働延長することに決めたの」

松本「こうした影響もあって、イギリスでは急激な物価上昇に対する、数千人規模の抗議デモが相次いだんだ」

 

Conちゃん、再エネ先進国の動きが気になる

松本「デンマークは電源構成の6割以上が再エネ。エネルギー自給率が6割を超えているって、ほかの欧州諸国に比べるととっても高いよね」

松本「ヨーロッパ全体で、2021年の年明けから例年より風の状況が悪かったの。だから、風力発電による発電量が伸び悩んで、デンマークも少なからず影響はあったと思うよ。それにデンマークもロシア産の天然ガスを輸入しているから、ロシア・ウクライナ情勢への対策が必要になったんだよ」

松本「デンマークは、2022年4月にロシア産天然ガスの依存脱却に向けた計画を発表していて、再エネやバイオガスへの移行を加速させるために国内の天然ガス生産を拡大することにしたの。加えて、現在ガス暖房を利用している40万世帯のうち半分は、2028年までに電気ヒートポンプなどに移行させる計画なんだよ」

松本「既に電力の半分が風力発電で賄われているから、化石燃料不足や燃料価格の高騰によるインパクトという意味ではドイツやイギリスに比べれば低いかもしれないね。でも、ロシア産の天然ガス依存度は10~15%。やっぱり影響はあるよね」

松本「デンマークは世界情勢の変化とエネルギー資源確保のリスクを考えた上で、天然ガス依存からの脱却を目指そうとしているんだね。ガス暖房が電気ヒートポンプなどになれば、暖房を再エネの電力で賄える。よりリスクを低減できるってことだよね」

日本だけでなく、いろいろな国で「エネルギー自給率」は重要だということに気づいたConちゃん。確かに資源を海外から買うしかない状況って、想像以上に怖いことかもしれない。じゃあ、ヨーロッパ以外の国は? 日本が目指すべきこれからとともに、次回後編でConちゃんがリポートします!

>後編に続く


取材協力:松本真由美

大学在学中からTV朝日の報道番組のキャスター、リポーター、ディレクターとして取材活動を行い、その後、NHK BS1ワールドニュース・キャスターとして番組を担当。2008年より東京大学での環境・エネルギー分野の研究、および教育活動に携わり、NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事も務める。

★さらに「日本のエネルギー」について知りたい方はこちら!
今こそ知りたい!日本のエネルギー事情―「エネルギー白書2022」(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)