日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第10回は、よく耳にするけど何だかよくわからない「原子力発電のごみの最終処分」のことを教えてもらうために、その中核を担うNUMO(ニューモ:原子力発電環境整備機構)へ。実はかなり昔から真剣に考えられていた取り組みをConちゃんがお伝えします!
Conちゃん、“最終処分”が何を処分するのか知る!
実は、電気を使うと「ごみ」が出る。
電気は無からは生まれない。電気をつくるために、火力発電なら燃料を燃やすことでCO2(二酸化炭素)が、太陽光発電なら鉛やセレンなどの有害物質を含む寿命を迎えた太陽光パネルが、ごみとして出てしまっている。
原子力発電は、電気をつくるときにCO2は出さないものの「高レベル放射性廃棄物」というごみが出てしまう。今回は、この「高レベル放射性廃棄物」を処分するとはどういうことなのか、日本での処分を担うNUMOを訪れた。
NUMOは、2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)によって設立された、高レベル放射性廃棄物を処分する日本で唯一の組織。
実松さんは、難しい「最終処分」のいろいろなことを、学校などいろいろな場所でわかりやすく教えているそう。早速ですが……
実松「昔から方法は決まっているよ。今はどこで処分するか、場所を探しているところだね」
実松「日本はエネルギー資源が少ないことは知っているかな? 原子力発電所はウラン燃料を使って発電するんだけど、これをリサイクル(再処理)すれば、もう一度燃料として利用することができるんだ。一度使い終わった燃料は『使用済燃料』と呼ばれていて、具体的には重量にして95%はリサイクルできるんだけど、5%だけはどうしても残ってしまうの。この5%を安全に処分しようというのが『高レベル放射性廃棄物の最終処分』だよ」
実松「たしかに数字だけ聞くととても少なく感じるかもしれないね。でも、最終処分はとても大事なことなんだ」
実松「考え始めたのは、もっとずーっと昔。日本で原子力発電が商業的に利用されるよりも4年前の1962年から。だから、最近になって急にってわけではなくて、ずっと考え続けられてきたことなんだよ」
実松「使用済燃料がリサイクルする工場に届けられて処理されると、さっきの5%が出てくるでしょ。それを、さらに処分できるように加工したものを『高レベル放射性廃棄物』と呼んでいるんだよ」
実松「まず、高レベル放射性廃棄物ってどんなものなのかを知ってもらおうかな。使用済燃料をリサイクルするときに、まだ燃料として使えるウランやプルトニウムという放射性物質を取り出すと、最後に放射性廃液という液体が残るの。この液体をガラス原料と高温で溶かし合わせて、ステンレス製の容器に流し込んで冷やし固めると……」
実松「……難しいよね。まあ、結果的に『ガラス固化体』っていうものが出来上がるんだけど、このガラス固化体=高レベル放射性廃棄物だから、同じものだと思っていいよ。つまり、これが『原子力発電のごみ』と言われるものだね」
実松「ガラスを使うのは放射性物質を長期間、安定して閉じ込めておくことができるからで、このガラス固化体……」
実松「そう思う人もいるかもしれないけど、このガラス固化体が爆発することはないよ。爆発が起きる原因となるウランやプルトニウムは取り出しちゃっていてほとんど含まれていないし、化学的に爆発を引き起こす物も含まれていないからね」
実松「今、国内にあるガラス固化体は約2500本。でも、それだけじゃないの。これまでに使われた燃料を全てリサイクルして、そこで出るごみをガラス固化体にしたと仮定すると、全部で約2万6000本」
実松「原子力発電って、その歴史は結構長くて、日本で使い始めてから50年以上たっているんだよね。私たちの世代は知らず知らずにその恩恵を受けてきた。だから、まず使った分の2万6000本は絶対に処分しないといけない。それに、この道筋は私たちの世代でつけないとだめだよね」
実松「ただ、いくつか課題もあって。作られたばかりのガラス固化体は非常に高温だから冷まさなきゃいけないし、放射能のレベルがとても高い。自然界にあるウラン鉱石と同じくらいのレベルに下がるまでには、数万年~10万年かかるの」
実松「この長い期間を地上で管理し続けるのが現実的かといえば……」
実松「数万年といった長期間にわたって地上施設を維持・管理していくとなると、コスト的な問題もあるし、台風、地震、津波など災害のことを考えると地上では現実的には難しいよね。それで今、最適と考えられているのが『地層処分』という処分方法なんだよ」
Conちゃん、地層処分の実力を太古に見る!
地層処分が何を処分するのかわかってきたConちゃん。だけど、数万年の長さで考える処分ってどんなものなんだろう。
実松「ガラス固化体をたくさんの人工のバリアで囲った上で、地下深くの安定した岩盤(天然のバリア)の中に埋める処分方法のこと。今、日本は300メートル以上深いところに埋めることが決まっているよ」
実松「地下深くに埋めようってこともすぐに決まったことではなくて、世界中でいろいろな処分方法が考えられてきたんだよ。宇宙や海底、南極の氷の下とか」
実松「ダメダメ。宇宙へ飛ばすには、ロケットに乗せないといけないよね。でも、ロケットの発射は100%成功するとは限らないでしょ。もし、失敗して落ちてきたら…。そういったリスクや、とても長い間管理しなければならないことによる将来世代への負担などを考えたときに、現時点で最適だったのが地層処分なんだよ」
実松「これは日本だけではなくて、原子力発電を行っている世界各国での共通の認識なの。例えばフィンランドは、もう地層処分をする処分場の建設が始まっているんだよ」
実松「ポイントは大きく3つ。人間の生活環境から隔離できる、酸素が少ないから錆びにくい、それに長い期間動きにくい」
出典:高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会『説明資料』(2020年2月17日更新)より
実松「“安定して閉じ込められる”ってことだね。アンモナイトの化石って見たことあるかな? あれは約9000万年前の地層から当時の形を残したまま出てきたものだよね」
実松「他にも、紀元前のガラス工芸品がきれいな状態で出てきたこともあって、地下は形を維持したまま閉じ込めておける性質があるってことだね。このガラスで固めるのも、放射性物質を長期間にわたって安定した状態で閉じ込めておけるからなんだ。こういった地下やガラスの能力を借りれば、人間の手から離しても安心できるよね」
実松「だからこそ、地層処分なの。地下の特性を利用すれば、数万年もの長い間、人間が常に管理し続けなくてもよくなるし、放射性物質が人の生活環境に影響を与える心配をかなり小さくすることができるの。それに、フィンランドみたいに使用済燃料を地下に“直接処分する”のではなくて、日本は“リサイクルしてから処分する”から、ごみの量も減らせるんだよ」
実松「それを今、探しているところなんだけど、避けるべきところはハッキリしているよ。活断層や火山の近くはダメだし、石油や石炭といった資源があるところも、遠い将来に掘り起こされてしまう可能性があるから適さない」
実松「そう思うよね。だから、そうしたことをみんなで話し合いながら考えていけるように、実は2017年に国が専門家に議論してもらって『科学的特性マップ』というものを公表したんだよ。それがこの地図」
出典:経済産業省 資源エネルギー庁
実松「一定の基準に基づいて、これまでにわかっているデータを客観的に整理してまとめ、4色に色分けされているの。最終的に処分地を選ぶにはもっと詳しい調査が必要だから、この地図で決まるものではないけれど、少しでも理解を深めてもらえればと思っているよ」
実松「例えば、オレンジはさっき言った火山や活断層に近いといった好ましくない特性があると推定されている地域。反対にグリーンは、安全な地層処分ができる可能性が他の色に比べて高い地域ってことが示されているんだよ。ちなみに、グリーンの地域の割合は日本全国の3分の2ほど。その中で処分場に必要な広さが、この赤い点」
地下に秘められた能力が、ガラス固化体の処分に強みを発揮することがわかったConちゃん。地図で見るとすごく小さな処分場。これって、どこにできるんだろう? 現在進行形で進む地層処分の今と、その先に迫ります!
取材協力:原子力発電環境整備機構
高レベル放射性廃棄物等を安全に処分する地層処分の実現に向けて事業を行う日本で唯一の事業体。英文名「Nuclear Waste Management Organization of Japan」から、略称はNUMO。各地で、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会を行っている。グーモは、イベントや公式サイトなどに登場するマスコットキャラクター。
https://www.numo.or.jp/
★さらに「科学的特性マップ」について知りたい方はこちら!
「科学的特性マップ」で一緒に考える放射性廃棄物処分問題(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)
★地層処分について、見てほしい・知ってほしいコト