提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
「電力会社」と聞いて思い浮かぶのは、「電気を作り、届ける」こと。でも実は、地域の役に立つため、環境のためなど、他にもさまざまな活動をしているのをご存じでしょうか。
2020年7月に、アイヌ文化が体感できる「ウポポイ(民族共生象徴空間)」が北海道・白老町(しらおいちょう)にオープンしました。これを地域と共に盛り上げてきたのが北海道電力です。ウポポイではどんなことが楽しめるのか、さらにオープンまでの舞台裏にも迫りました。
北海道・白老町にできた「ウポポイ」って何?
地場産の「白老牛」や地域ブランドの「虎杖浜たらこ」(こじょうはまたらこ)をはじめ、毛ガニやホッキ貝、サケやニジマスなど、海・山・川からの恵みが魅力の白老町。
北海道南西部に位置し、太平洋に面した町までは札幌市から南へ車で1時間ほど。
遠くを望めばホロホロ山やオロフレ山などの尾根がつながり、地域のほとんどが国有林に覆われるほど自然豊かな場所です。
ポロト湖畔。市街地からほど近くにも美しい景色が広がる
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
新千歳空港からJR白老駅までは特急電車で約40分
ほかにも、雄大な自然の中にこんこんと湧く温泉があったり、アウトドアレジャーを楽しめたりと、観光にはうってつけ。
そんな旅行に行けば新発見がたくさんありそうな白老町に、アイヌ文化の発信拠点「ウポポイ(民族共生象徴空間)」はオープンしました。
白老町は、古くから暮らすアイヌ民族が歴史を築いてきた町の一つ。アイヌ文化の復興や創造、発展を目指すこの地にナショナルセンターが誕生したんです。
ウポポイはポロト湖畔の合計約1万5000平方メートルもの敷地に広がる文化発信拠点(※写真はイメージ)
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
ウポポイには、アイヌ文化を“体感”できるさまざまな施設が立ち並びます。
北海道初で日本最北端の国立博物館となる「国立アイヌ民族博物館」をはじめ、アイヌ文化に触れられる「体験学習館」や「工房」、生活空間を再現した「伝統的コタン(集落)」など盛りだくさん。
ちなみに、愛称のウポポイは「(おおぜいで)歌うこと」を意味するアイヌ語。
国立アイヌ民族博物館なら「アヌココロ アイヌ イコロマケンル」(アヌココロのロは小文字)のように、各施設にもアイヌ語の名前が付けられています。
ポロト湖を背景にした「伝統的コタン」では、ユネスコ無形文化遺産にも登録されているアイヌ古式舞踊が披露される
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
新グルメやグッズも! 体感したいアイヌの暮らし
ウポポイの最大の魅力、それはアイヌを世界に発信する場所である以上に、「アイヌ文化って面白い!」と感じられるスポットだということ。
まず見てほしいのが、国立アイヌ民族博物館に展示された「衣装」。芸術品とも称されるアイヌの衣装は、伝統的な文化の粋(すい)が詰まっているとも言われます。
「伝統的な文化」と重たく受け止めずに、素敵なアイヌ文様が施された衣装は眺めるだけで楽しめますよ。
アイヌの衣装などが展示されている国立アイヌ民族博物館
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
アイヌの必須道具「マキリ(小刀)」。館内では「ことば」「くらし」など6つのテーマで展示されている
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
頭の中にアイヌ文化をインプットしたら、次は体にインプットを。
体験学習館を訪れれば、アイヌの楽器「ムックリ(口琴)」などの制作ができたり、「ポロトキッチン」でアイヌ料理の調理と試食が楽しめたり、アイヌのカルチャーにどっぷり漬かれます。
チプ(丸木舟、プは小文字)の操船を見ながら伝統的なアイヌの暮らしについて教えてもらえる
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
体を動かしたら、そろそろおなかが…。もちろん、歴史や文化を勉強するだけの場所ではありません。
園内にあるレストランやカフェには、白老町が誇る山海の幸と北海道の自然の恵み、そこにアイヌの食文化に由来した創作料理などを織り交ぜたメニューがずらり。
エゾシカのジビエからスイーツまで、まさにここでしか味わえない料理の数々に驚くはずです。
「焚火ダイニング・カフェ ハルランナ」の名物メニュー「ユク(蝦夷鹿)の焚火ロースト」(2800円、クは小文字)
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
「ヒンナヒンナキッチン 炎」のアイヌ文化を代表する食材を盛り込んだ「行者にんにくザンギ定食」(880円)
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
アイヌ伝統料理オハウ(温かい汁物)をメインにした「カフェリムセ」(ムは小文字)の「チェプオハウセット」(1200円、プは小文字)
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
「Sweets café ななかまど イレンカ」の人気スイーツ「クンネチュプ」(150円、プは小文字)。白老産のたまごを使用した半熟カップチーズケーキ
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
国立博物館ならではのオリジナルグッズもバラエティーに富んでいます。
アイヌ文様をデザインしたバッグやマグカップなど、ここでしか手に入らないものばかり。
トートバッグ(1350円)など、ウポポイオリジナルのアイヌ文様グッズは「国立アイヌ民族博物館ミュージアムショップ」で
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
ぬいぐるみ(2300円、左)やボールチェーンマスコット(900円、右)など、ショップ「ニエプイ」にはPRキャラクター「トゥレッポん」グッズが充実
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
レストランやカフェから窓の外を眺めれば、雄大な山々と青く澄んだポロト湖。
ガマやエゾヤマザクラ、ハルニレなどアイヌ文化に関わりの深い40種類以上の植物が園内の至るところで景色をつくり、四季折々の姿で湖畔を彩ります。
アイヌの人たちが暮らしてきた美しい景色に身を包めば、日頃ためてきたストレスもスッキリするはずです。
湖畔に広がる美しい風景。一面が凍る冬季のポロト湖も見どころ
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
オール北海道で応援するウポポイ
伝統芸能に限定グルメ、オリジナルグッズに美しい景色と楽しさ満載のウポポイ。実は、“オール北海道”でバックアップされてきました。
その中心となるのが、2016年に北海道庁が旗を振り、北海道の企業や団体等と共に設立された「ウポポイ官民応援ネットワーク」です。
設立当初はウポポイができることを知る人も少なく、「どうすれば応援の輪が北海道全域に広がるものか…」と、応援ネットワークは大きな悩みを抱えていました。
そこに北海道電力が入ったのは、2018年のこと。
ウポポイを応援するため社員の名刺にPRシールを貼ったり、ポスターやチラシで告知したり。小さなことからコツコツとできることを進めたそうです。
北海道電力でオープン直後まで同プロジェクトを担当した家入由佳梨さんが振り返ってくれました。
「アイヌの方々や北海道のため、当社には何ができるのか。それをずっと考えてきました。全社的な協力を仰ぐために各事業所へ一つ一つ丁寧に説明をし、各エリアでチラシを配ったり、お客様と会話するタイミングでお知らせしたり、ウポポイのPRにつながることを地道に続けてきたんです」
プロジェクトを担当した北海道電力 総務部の家入さん
提供:北海道電力
「最初は『ウポポイって何?』を説明するところからスタートしたので、直接は電力事業と関係がないぶん、理解を得るのに苦労しましたが、結果的に当社一丸となってバックアップすることができたのは、本当によかったと感じています」
アイヌ文様入りの北海道日本ハムファイターズのユニフォームを着て仕事をする北海道電力本店の従業員。道内にある10事業所で実施し、ウポポイのPRにつなげた
提供:北海道電力
広大な北海道全域に事業所と社員を有する同社の取り組みなどを機に、応援ネットワークの輪は急激に広がりをみせます。
現在、関係行政機関や経済団体、様々な企業など222団体(2021年12月31日現在)で構成され、北海道内でのウポポイの認知度は驚異の97.6%。
オープン直前は、北海道全体が「ウポポイ! ウポポイ!」とお祭り騒ぎになったそうです。
応援ネットワークの事務局運営を担う、北海道 環境生活部 アイヌ政策推進局 アイヌ政策課では、「今後も、新型コロナ感染症の状況を注視しながら、ウポポイをはじめとしたアイヌ関連施設などに多くの方が訪れることを目指し、情報発信をしていきます。特に北海道全域にネットワークがある北海道電力さんには大きな期待を持っています」と、さらなるバックアップに力を込めます。
2020年7月のオープン以降、修学旅行や観光ツアーなどで数多く利用されている
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
オープンから1年間で、ウポポイには約26万人が訪れました。来場者からは、「とても勉強になった」「もっとアイヌの歴史やルーツが知りたくなった」などの感想が寄せられています。
とりわけ目立つのが、体験交流ホールでの伝統芸能を見た人たちのコメント。
「歌と踊りが素晴らしくて自然と涙が出てきた」「とても感動しました! ぜひ多くの人に見てほしい」といった絶賛の声が多数集まっています。
体験交流ホールの古式舞踏などアイヌの伝統的な歌や楽器の演奏は必見
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
先述の北海道電力・家入さんも初めて見たときに、「歌と踊りに込められた魂を感じて、シンプルに感動しました! ウポポイのおかげで、アイヌの新しい一面を知ることができました」と、そのときの興奮を思い出しながら話してくれました。
提供:国土交通省
何となく知っている「アイヌ」のこと。知れば知るほどに、「素晴らしい文化だなぁ~」という発見があります。
行ってみないとわからない。それがウポポイです。
1日ではきっと回り切れないので、季節の移ろいを楽しむためにも、2度3度訪れてみてはいかがでしょうか。
■DATA
提供:公益財団法人 アイヌ民族文化財団(※写真はイメージ)
ウポポイ(民族共生象徴空間)
住所:北海道白老郡白老町若草町2-3
営業時間:9:00〜17:00、土日祝9:00〜17:00(最終入場各60分前)※季節により変動します
休み:月曜(※祝日または休日の場合は翌日以降の平日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
料金:一般1200円、高校生600円、中学生以下無料ほか
アクセス:札幌市街地から車で約1時間、新千歳空港から特急電車で約40分のJR白老駅より徒歩約10分
https://ainu-upopoy.jp/
ウポポイ 国立アイヌ民族博物館オンラインショップ
https://ainu-upopoy-museum.shop/
北海道
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/
北海道電力
https://www.hepco.co.jp/
<貢献する主なSDGsの目標>
■電気事業連合会
SDGsの達成に向けた地域共生の取り組み