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山の中で自然を満喫! 群馬県・上野村の癒しの森&地下に広がる水力発電所ツアー

2020.03.05

全国各地にある発電所、その数はなんと4000カ所以上。一口に発電所といっても、実は一つひとつ違った個性があるんです。今回は、群馬県・上野村にある、まるで秘密基地のような地下水力発電所へ。心も体も癒される森林セラピーや地元グルメと一緒に、大自然の楽しみ方を教えちゃいます!


地元グルメとテラスBBQを満喫できる「道の駅 上野」

関東一のきれいな川とも言われる「神流川(かんながわ)」。その流れに沿って山あいに広がるのが、今回訪れた群馬県・上野村だ。

東京から車で2~3時間、電車なら上信電鉄・下仁田駅や西武鉄道・西武秩父駅からタクシーで30~60分ほどの場所にある。


上野村までの道中に通る山村。何よりも心を癒してくれるのは、各地で見られるこういった日本の原風景だ

そんな上野村で、まず立ち寄りたいのは、2019年7月にグランドオープンした「道の駅 上野」。


「おかえりなさい」をコンセプトに造られた黒屋根と板張りの建物は、誰もがどこか懐かしさを感じて、くつろげる

もともとは群馬県内で道の駅第1号として誕生。それ以来、村のさまざまな特産品が集まっていた場所だったが、2019年に完全リニューアルした。

地元の特産品である猪豚(いのぶた)の料理が味わえる「レストラン」や、手作りお菓子工房を併設した「おみやげショップ」、上野村の木工作品が並ぶ「ウッディー上野村 銘木工芸館」までそろう上野村観光の玄関口。

何も調べてこなくても、ここに来ればまずは上野村に来た醍醐味が味わえるはず。


地元特産の猪豚のカツを贅沢に乗せた「猪豚ソースカツ丼」(1050円)。平日5食、土日祝日は10食の数量限定なのでお早めに!


入口横の売店で買える「十石みそソフト」(350円)。特産の麦みそをミックスすることで、濃厚なチーズのような味わいに

入口から入り真っ直ぐ進むと、道の駅 上野の目玉「うえのテラス」に出ることができる。


神流川を目の前にした広いテラスにベンチが置かれ、川のせせらぎを聞きながら、ゆっくりとした時間を過ごせる

今後、テラス奥の席で猪豚を使ったバーベキューがスタートする予定で、さらに、うえのテラスから川に降りられるようにもなるそう。シーズンに合わせた川遊びを自由に楽しめるはず。


おみやげショップでは、生シイタケなど地産品や農協ブランド「天空キッチン」の食品、麦みその「十石みそ(粒・練)」(500g、370円~)などが買える

ちなみに、おみやげショップには、食べた人はもれなくハマるという超ローカルフード「とちもち(トチの実でつくったお菓子)」が年に数回だけ置かれることがあるので、もし見かけたら必ずゲットを!

 

地下秘密基地に入れる「神流川発電所」見学ツアー

上野村には、関東最大級の鍾乳洞として有名な「不二洞」がある。延長2.2キロメートルという地下に入っていく洞窟だが、実はもう一つ、涼しい“地下観光”が楽しめる場所がある。

それは山奥深くにある揚水式水力発電所「神流川発電所」だ。


地下深くに進んだ先にある発電所の入口。中に入ると驚きの大空間が広がる!

施設見学ツアーは、地下深くトンネルを進んでいったり、地中にある巨大空間に入ったりと、気分はまさにアドベンチャー。

このツアー、ダムがある上野村と発電所を持つ東京電力ホールディングスが共同で運営しているというもの。山間の村と電力会社が密に協力し、いい形でタッグを組んだことで、年間3000人が訪れるほどの人気観光スポットに。しかも、見学ツアーは「無料」というからありがたい限りだ。


上野村にある上野ダムは、高さ120メートル、幅350メートル、ダム頂上部の標高は846.5メートル

今年、発電所を運営する東京電力ホールディングスは、再生可能エネルギー発電事業領域におけるリーディングカンパニーに向け、再生可能エネルギー発電事業を「東京電力リニューアブルパワー株式会社」として2020年4月に分社化する方針を決定している。その中で、この神流川発電所は水力発電事業のかなめともいえる発電所の一つなのだ。

バスに乗って進むと、トンネルとトンネルの間にある上野ダム駐車場で一度停車。ここでは、神流川発電所の“燃料”ともいえる膨大な水を蓄える「上野ダム」を見ることができる。


上野ダムから見た奥神流湖(おくかんなこ)。神流川発電所では上部、下部の調整池を合わせて最大1267万トンもの水をためることができる

この駐車場は車で普通に来ることも可能(開放時間9:30~16:30、12月上旬~3月末は閉所)。歩いてダムの真上まで行けば、秋には山々が黄色く染まるダムの景色を一望できるので、この季節にのんびりするのにはうってつけ。(※見学ツアーでは降車しません)

駐車場からバスはさらに先に進み、途中から深く長いトンネルに入る。


まるで秘密基地のような入口の先には、傾斜9%、約1.8キロの長いトンネルが待っている

神流川発電所は「揚水式」と呼ばれる水力発電所。

需要がピークの時などに上流の南相木(みなみあいき)ダムから水を流して発電し、電気の供給に余裕があるときに下流の上野ダムにたまった水をモーターで上流に戻している。簡単に言うと、「電気の需給に合わせて同じ燃料を上げ下げして、繰り返し発電できる」というのが揚水式の特徴だ。

現在、1、2号機が稼働しているが、今後設置される予定の3~6号機すべてが稼働すると、最大出力282万キロワット(kW)という“世界最大級”の揚水式水力発電所になるとも言われている。


トンネル内の気温は年中15~16℃と涼しい。夏でも涼しいため、入口で野生のシカが涼をとっていることもあるそう

南相木ダムと上野ダムの距離は6キロ超。その間に、これから向かう発電所があるのだ。

標高850メートルのトンネル入口から、160メートルほど地下に。数分、地下へ地下へと進んでいくと発電所の入口が現れる。

中に入ると…


目の前に広がる「大空洞」という巨大空間。3、4号機の発電機を設置する場所として造られた

高さ52メートルもある大空洞で、なんと有名なテーマパークにあるお城がすぽっと収まるほど広いらしい。

壁面にぽつぽつと見える突起は、「PSアンカー」と呼ばれる崩落防止用の補強材。その数3700本。表に出ている部分は1メートルに満たないが、地中の先に10~20メートルも伸びている。

大空洞を背にすると見えるのは、発電所の心臓である「発電機」と「変圧器」だ。


赤く飛び出している部分の下に発電機が埋まっている

ツアー後半で上る展望台から施設内を一望すれば、直径8メートルもの“赤丸”発電機がすぐに目に飛び込むはず。

この発電機1台で最大47万キロワットの発電能力があり、群馬県高崎市とほぼ同規模のおよそ15万世帯分をまかなうことができるそう。

見学のタイミングがよければ、発電機の稼働音を聞くことも。

「ゴオォォォォ…」という音とともに水が流れ始めると、「ゴンゴンゴンゴン…」と発電機の回転が毎分500回転になるように徐々に水量が調整されていく。

そして、「ゴンッ」と大きな音が響き渡ると、発電機の上部にあるランプが赤く点灯。発電を開始したというサインだ。

ここまでかかった時間は約3分。遠隔操作室でスイッチオンすれば、およそ5分で最大出力まで出せるそう。

そして、この瞬間から、電気は街に送られている。ただ、すべて地下でのことなので、楽しめるのは音だけだ。


作りたての電気は「電気管路」(写真正面)という空洞の管を通り、真横にある「変圧器」(写真右)に。50万ボルト(V)という超高電圧の電気に変えられ、各地へと送られていく

運転開始から最大出力までわずか数分という速さで急激な電力消費量の変化に対応できる揚水式水力発電所は、水を上げ下げすればエネルギーを作ったりためたりすることができるため、さまざまな発電方法の中で「調整役」を担っているのだ。また、出力が不安定な再生可能エネルギーが増えてきたなか、揚水発電所での需要と供給の調整が不可欠となってきている。

 

森の中でお昼寝!最高に癒される森林セラピー

もし“お泊り旅”ができるなら、必ず体感してほしいのが、上野村に広がる「森」だ。

なんといっても上野村は敷地の約95%が山林という山の中にある。人口は1200人弱とされていて、もしかすると人間よりも動物の数の方が多いかもしれないと言われるほど、自然に包まれた場所だ。

そんな環境で、森林ガイド同行でないと入ることができない深い森の中を散歩することができるツアーがある。


見える場所はほぼすべてが国有林だそう。スギやヒノキが多い日本の山々と比べて、カエデ、カツラ、トチノキ、ホウノキなどさまざまな樹木を見ることができる

10:00に上野村の「森の体験館」に集合したら、車を乗り換えて移動。山の奥へ奥へと入っていく。

山の入口は、標高1000メートルに位置し、スマホの電波はもちろん届かない。

でも、そんなことが全く気にならなくなるほどの景色が広がっている。紅葉シーズンには、周囲の木々がカラフルに色づき、華やぐそうだ。

車で1時間ほど移動すると到着するのが、「中之沢源流域」と呼ばれる森の中。中之沢の水は、神流川、そして利根川へと流れていく。


道路から沢に降りるために下っていく階段は、整備はされているもののかなりの急斜面

森の中とはいえ、道や階段はある程度整備されている。でも、自然に配慮した最低限のものだけなので、軽い山歩きの覚悟は必要だ。

腐葉土が被さってできたふかふかの急な階段を10分ほど降りていくと、見えてくるのが「オボロカヤの滝」だ。


「オボロカヤ」はアイヌ語で「水のたまり場」。なぜアイヌ語で名づけられたのかは分からないのだそう。滝つぼで水に触ることも

およそ15メートルの高さから川の水が一気に滝つぼへ。時間によっては、木々の隙間から光が差す“天使のはしご”を見ることも。

滝に圧倒された後は、すぐ近くにあるウッドデッキの上で、森のお昼寝。


シートはガイドさんが持ってきてくれる。寝転がると上には大木の葉が広がり天然のシェードに

シートを敷いて、30分ほどごろり。森の静けさの中に響くのは滝の音だけ。ここで一休みすれば、たまったストレスもすっきりなくなるはずだ。

ちなみに、「森の中で寝る」と聞いたら不安になるのが「虫」。でも、ご安心を。

ここは標高1000メートルの地。高すぎて蚊やブヨ、アブといった虫は生息できず、ほとんど見ることはない。虫嫌いでも来られる森というのは、かなりポイントが高い。

森の昼寝を楽しんだら、もう一度、階段を上る。少しハードだが、ここでの足取りは少し軽くなっているはず。

再び車に乗って移動すること10分。山小屋でツアー特製のお弁当を食べたら、午後からは第2の散策ポイントへ。

見どころは何といっても、いま人気急上昇中の「苔」だ。


中之沢源流域の上流ポイント。苔むした岩と川の流れを見ると、癒される

まさに「苔の森」と言える光景は、青森県にある有名な景勝地・奥入瀬渓流にも引けをとらない。

ツアーでは、苔の森を眺めながら、さらに奥に進んで、木の橋を渡ったり、広場から川を見下ろしたりと、森の中を散策していく。


昼にお弁当を食べる山小屋。体験した人たちの間では「森のレストラン」とも呼ばれているそう

数カ所の散策スポットを車で移動しながら回っていき、森林セラピーツアーは終了。

森に入るため、注意事項はいろいろあるが、覚えておきたいのは、「水」と「歩き方」。

動物の糞などが含まれている可能性があり川の水は飲むことができないため、出発前に必ず飲料水は買っておこう。

また、森林歩きなので服装には気をつけつつ、それ以外にツアー中絶対に守らなければならないのは、「ガイドさんの前を歩かない」「ガイドさんが歩いた場所以外は歩かない」こと。

中之沢源流域はほとんど人が手をつけていない森の中。穴が、ヘビが、クマが!?と、どこにどんな危険が潜んでいるか、何が出てくるかは分からない。癒し効果抜群の景色に見とれてぼんやり歩くと危ない!でも、ガイドさんについて行けば大丈夫だ。


森林セラピストの中村成孝(なかむらしげたか)さん。優しく森の知識を教えてくれる

今後はここで、「森ヨガ」なども予定しているので、上野村の公式サイトなどでイベントチェックもしておきたい。

車に乗って下山した後は、地元住民も愛する温泉施設「しおじの湯」へ。露天風呂でひと汗流せる。入浴料もツアー料金に含まれているのも、うれしいポイントだ。


水のせせらぎと森の空気にいろいろな悩みごともスッキリ

森林セラピーのガイド・中村さんは、「例えば砂漠の国から見れば、水が地面から湧き出ること自体かなり特殊なこと。植物の多様性と豊富な水資源は、日本を説明するときにかなり重要な話です」という。

グルメや観光、エネルギーまで、自然とともに生きる上野村。いつもの生活にちょっと疲れたときは、山と川の恵みを大切にする上野村の空気に触れて、日本の豊かさをあらためて感じてみるのも面白いはず!

※台風の影響により、「神流川発電所見学ツアー」「上野村森林セラピー」は2019年度の開催を中止しています。詳しくは、上野村産業情報センター(0274-20-7070)までお問い合せください
※2019年9月取材時点の情報です。再開時には内容が変更になる場合があります
※表示価格は全て税込(10%)です


■スポットDATA

道の駅 上野

住所:群馬県多野郡上野村大字勝山127
電話:0274-59-2665
時間:売店9:00~18:30、レストラン11:00~15:00
休み:レストラン木曜
http://www.uenomura.jp/tourism/buy/michinoeki.html


神流川発電所

住所:群馬県多野郡上野村大字楢原310—1(集合場所:森の体験館)
電話:0274-20-7070(上野村産業情報センター)
時間:毎週月・水・金曜13:00~15:00(要予約、所要時間120分)※夏休み期間中は土曜も開催。詳細は予約時にお問い合わせください。予約は公式サイトから
料金:無料
http://user.uenomura.ne.jp/kankou/view/hatsudensyo.htm


上野村森林セラピー

住所:群馬県多野郡上野村大字楢原310—1(一般社団法人 上野村産業情報センター)
電話:0274-20-7070(同上野村産業情報センター)
開催日:~11月9日の日曜※3人以上で開催、その他の日程は人数次第で相談可※天候や現場の状況次第で中止になる場合があります
時間:上信電鉄下仁田駅集合9:30~16:30、森の体験館集合10:00~16:00
料金:1人5500円
http://www.uenomura.jp/tourism/play/morinotaikenkan/therapy.html