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これからの家電選びのポイントは省エネ。家電ライター・田中真紀子さんに「ヒートポンプ」について聞いてみた!

2024.01.29

エアコンや洗濯乾燥機などの家電を購入する際によく聞く言葉「ヒートポンプ」。なんだか省エネらしいけど、いったいどんな技術なのか、いまいち、よくわからないという人も多いのでは?そこで今回は、家電ライターの田中真紀子さんに、ヒートポンプと省エネ家電についてお話を聞きました。

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白物・美容家電ライターの田中真紀子さん

 

育児に追われる日々の中、電気圧力なべの魔法感に心を奪われて……

――まずは家電ライターの活動について教えてください。

家電についての記事の執筆や監修をするのが主な仕事内容です。実際に製品をお借りして自宅で日常的に使用してみて、その使い勝手をレビューすることもありますね。

仕事の中で特に大事にしているのは、新製品の発表会に行くことです。多い日は1日に3件の新製品発表会を渡り歩くことも。発表会では近年のトレンドなど最新情報を得られるだけでなく、メーカーさんがどんな思いで商品をつくり上げたのか、開発の背景から詳細に教えてくれることも多いんです。ですから、新製品発表会に行くと、ユーザーの皆さんが今、何に困っていて何に関心があるのか、すごくよくわかりますよ。

 

――最新家電を真っ先に試せるのは羨ましいです!田中さんはどうして家電ライターになろうと思ったのですか?

もともとは生活情報系のライターで、最初に家電の記事を書いたのは子供が1〜2歳の頃でした。毎日子育てに追われて疲れ切っていた時に、便利な家電の「魔法感」に心を奪われたんです。

例えば電気圧力なべ。材料を入れてスイッチを押したら、あとはほったらかしで煮込み料理が完成しちゃうんですよ。しかもちゃんとおいしい。 家電をうまく活用することによって家事の効率がこんなにも上がるんだ!と、救いの手を差し伸べられたような思いでした。その時の気持ちをたくさんの人に伝えたくて、家電についての記事をメインに書くようになりました。

 

電気代は家電選びの重要ポイント。省エネ性能が強く求められる時代に

――普段からさまざまな家電に接している田中さんから見て、家電の省エネ性能は上がってきていると思いますか?

そうですね。物価高などの社会情勢やエコに関するユーザー側の意識が高まる中で、省エネであることがより一層重視される時代になってきています。今や省エネは家電選びの一つの基準になっているので、メーカーも省エネ性能の高さをアピールした家電を多く打ち出してきています。

 

――洗濯機を購入する際に、「ヒーター式よりヒートポンプ式の方が省エネですよ」と勧められたことがあります。なぜヒートポンプは省エネなのでしょうか?

ヒートポンプが採用されている家電には、エアコン、冷蔵庫、洗濯乾燥機、給湯器、除湿機などがあります。

ヒートポンプとは、簡単に言うと空気中の熱を汲み上げて、必要な場所に移動させる技術です。気体は圧縮させると温度が上がり、膨張させると温度が下がる性質を持っています。熱の移動と気体の性質を利用して、暖房や給湯、あるいは冷房を行うわけです。

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空気中の熱を汲み上げて、必要な場所に移動させるのがヒートポンプの役割(提供:一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター)

 

電気ストーブや石油ファンヒーターなどの燃焼系暖房だと、1のエネルギーから1もしくはそれ以下の熱エネルギーしか生み出せないところ、最新のヒートポンプエアコンだと、1のエネルギーで7の熱エネルギーを生み出すことができるんですよ。熱を生み出す効率が良いため、省エネにつながるというわけです。また、太陽が生み出した空気中の熱、つまり再生可能エネルギーを利用することになるので環境にも優しいと言えるでしょう。

 

――ヒートポンプはエコにもつながっているんですね!最近はめっきり寒くなり暖房をフル稼働するシーズンに入りましたが、省エネの観点からすると暖房器具はエアコンが良いのでしょうか?

熱効率の良さを考えると、やはりエアコン暖房がおすすめです。ただ、ある家電メーカーの調査では、エアコン保有者のうち、暖房機能を使っている人は約4割ということがわかったんです。降雪が多い寒冷地では、ガスや灯油などを必要とする燃焼系暖房の方が暖かいというイメージがあり、多く使われていることがその一因でしょう。

 

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エアコンにはヒートポンプが採用されていて、省エネ性能が高い(yslab / PIXTA)

 

ただ、最近では寒冷地用エアコンもすごくパワフルになってきています。エアコン暖房は灯油を補給する手間もありませんし、火を使わないので火災の心配がないというメリットも。直接燃料を燃やすことがないため、CO2の排出も削減できます。

また、ガスや灯油を使った暖房器具が主流のヨーロッパでも、エネルギーの安定調達やカーボンニュートラル実現の観点からヒートポンプを取り入れていこうという動きがあります。日本は早くからヒートポンプの技術をリードし、多くの日系企業がグローバルに活躍しているので、今後もより一層注目されていくと思います。

 

高まる省エネへのニーズに応え、ヒーター式からヒートポンプ式への切り替えも

――これからますますヒートポンプ搭載の家電は増えるのでしょうか?

省エネ意識の高まりもあって、ヒートポンプを導入した家電はすでにたくさんありますが、今後ますます増えてくるのではないでしょうか。

例えば、洗濯機の乾燥方式には、ヒートポンプ式とヒーター式の2種類があります。ヒーター式は乾燥力が高い反面、ドライヤーの温風を長時間当て続けるようなものなので、どうしても電気代が高くなってしまうのが難点でした。そこで、これまでヒーター式を採用していたあるメーカーは、その乾燥性能を維持したまま、ヒーター式からヒートポンプ式への変更を実現し、大きな話題になりました。

 

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洗濯乾燥機のヒートポンプ搭載機種も増えている。画像はイメージ(shimi / PIXTA)

 

また、空気中から熱を取り込む際になるべく温度を下げないようにするなど、ヒートポンプ自体の性能もアップしています。大型家電の買い替えの際は価格に目が行きがちですが、星マークが並ぶ「省エネ性能ラベル」などもチェックしてみてください。同時に、省エネ性能が高い家電を選ぶことは、地球温暖化対策につながるということも意識したいですね。

 


田中真紀子(たなか まきこ)

白物・美容家電ライター。家事をラクにしてくれる白物家電や、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電などの情報を生活者目線で発信。製品の紹介記事やレビュー記事を雑誌、ウェブにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務、テレビ・ラジオ出演なども行っている。

公式HP:https://makiko-beautifullife.com/

 

企画・編集=Concent 編集委員会


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『無理のない省エネ節電』(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト)

『省エネ・節電 お役立ち情報』(電気事業連合会特設サイト)