保存が利くうえに調理の手間がかからないなどの魅力が年々支持され、市場規模も拡大している冷凍食品。その保存に欠かせないものが冷凍庫ですが、できるだけ節電したいところ。そこで、“冷凍王子”として活躍する西川剛史さんにインタビュー。節電や食品ロス削減に効果的な冷凍のコツをはじめ、おすすめのアレンジレシピや注目の冷凍食品トピックスなどをうかがいました。
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“冷凍王子”として活躍する西川剛史さん ※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
時短で栄養も摂れる冷凍食品で多忙な現代人の力に!
――西川さんが冷凍食品の専門家になったきっかけから教えてください。
もともと食べることも料理することも好きで、中学生の頃には家族のお手伝い感覚で料理するほどでした。母が買ってくる食品への関心も高く、高校生の時に食べた「あんかけ五目焼きそば」という冷凍食品のおいしさに感動したのが原点です。
基本的に、料理は手間と時間をかけたほうがおいしいですよね。でも冷凍食品は簡単かつスピーディーながら絶品。「どうやったら、こんなに本格的で作りたてのようなおいしさの商品にできるんだろう?」と、非常に興味が湧いたんです。
その後大学で栄養学などを勉強していた時に、忙しい人ほど不健康な食生活を送りがちであることに気づきました。しかし簡単便利で栄養も摂れる冷凍食品であれば、その課題を解決できると考え、冷凍食品の道を究めたいと思ったんです。
その後は冷凍食品の大手企業に採用いただき、働きながらブログを書いていました。それが有名TV番組のディレクターさんの目に留まって出演したことが、私が広く知られるようになった一大転機です。2012年のことですね。
冷凍庫の開放時間を短くして隙間をなくそう!
――冷凍庫を節電するコツを教えてください。
保冷効果を高めることが大切ですね。お店から買って帰る際も、なるべくとけていないほうが節電できます。そのためには1パックよりもまとめ買いするよう心掛け、冷凍食品同士を密着させるように袋詰めしましょう。
※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
保冷バッグの中も、できるだけ隙間ができないようにするのがコツ。また、冷気は上から下に降りるので、保冷剤やその代用にする冷凍食品は最上に置くことがポイントです。
※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
冷凍庫の使い方としては、大前提として庫内の整理整頓とカテゴリーごとの定位置化、食品の見える化を心がけましょう。これは、見つけやすくして開けている時間を短くするためです。食品探しに時間がかかるとその間に庫内の温度が上がり、冷気を出す冷凍庫の電気代もかかってしまいますから。
加えて、冷凍庫は隙間があると温度が上がりやすいので、できるだけ冷凍食品や凍った食材でいっぱいになっているほうが電気代はかかりません。もしスペースが空いている場合は、保冷剤やペットボトルに水を入れて凍らせたものを入れておくのも手です。
――食品ロスを削減するためには、どんなテクニックがありますか?
余った食材や料理を冷凍すること自体が食品ロスの削減となりますが、長期の冷凍保存は霜の原因になるなど味の劣化につながりますので早めに消費しましょう。ポイントは、庫内を整頓したうえで、使いかけの食品やこまごましたもののスペースを作ること。それらを一度に使う日を決め、カレーやスープ、鍋類など食材の汎用性が高い料理に用いるのがおすすめです。
このように冷凍庫内を整理整頓することがポイント ※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
なお、作った料理を冷凍する際は完全に冷めてから冷凍してください。熱を持っていると庫内の温度が上がって、その分電気代もかかってしまいます。
餃子の炊き込みご飯やパスタのオムレツをお試しあれ
――おすすめの冷凍食品アレンジレシピを教えてください。
いくつかあるのですが、冷凍食品の中でも人気の高い、餃子を使った炊き込みご飯を紹介しましょう。炊飯器で炊く際、水に醤油、鶏ガラスープの素、ニンニクを混ぜてお米を浸します。その上に凍ったままの餃子を並べて通常モードで炊き、完了したらゴマ油をひとかけ。ざっくり混ぜ、お椀に盛ったら刻んだ青ネギや生姜を乗せて完成です。
炊飯器に冷凍餃子と調味料を入れて炊き上げるだけ ※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
餃子の炊き込みご飯 ※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
冷凍餃子をそのまま炊飯器に入れるレシピなので、フライパンが必要ありませんし、ご飯とおかずが同時に作れます。味わいも、お肉のうまみや皮のツルンとした食感をご飯と一緒に楽しめるのでおいしいですよ。
もう一品は、冷凍パスタを使ったオムレツをご紹介しましょう。パスタのオススメはミートソース系です。まずはパッケージの記載通りに、冷凍パスタを電子レンジで調理。その間にボウルに卵とチーズを入れてしっかり混ぜ、レンチンしたパスタも加えてさらによく混ぜます。
次にフライパンでオリーブオイルを温めたらボウルの中身を流し入れ、両面を3分ずつ焼いて完成です。オムレツを裏返す際は、お皿を使うと反転させやすいですよ。パスタの本場イタリアでもこの料理はおなじみなので、ぜひ試していただけたら。
調理の下準備 ※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
冷凍パスタを使ったオムレツ ※画像:いますぐ食べたい!冷凍食品の本(自由国民社)より
注目は「餃子」「ラーメン」「高級冷食」「プラントベース」
――冷凍食品は進化も著しいですが、注目のジャンルはありますか?
おかず系であれば冷凍餃子ですね。二大ブランドである、味の素冷凍食品の「ギョーザ」とイートアンドフーズの「大阪王将 羽根つき餃子」がけん引しており、前者は油と水なしで、後者はさらにフタも不要でパリパリの羽根つき餃子が焼けます。
主食系で特に注目しているのは冷凍ラーメン。メーカーではキンレイの「お水がいらない」シリーズが画期的で、スープ、麺、具材と3層構造でまるっと冷凍にすることにより、その名の通り水要らずで調理できます。
冷凍ラーメンは、有名店がお取り寄せや自動販売機で発売するケースが増えていたり、調理までしてくれる自販機「ヨーカイエクスプレス」が登場したりと盛り上がっていますが、価格は800円とか1000円とか、それなりにするんですね。
その点キンレイは人気店とのコラボにも積極的でお店の味を再現しつつ、300円台程度とお手頃価格なのも魅力です。とはいえ800円や1000円の冷凍ラーメンが高いというわけではなく、普通はそれだけ原材料や手間がかかるんですね。それをスケールメリットや技術でコストカットできるのが、長年のノウハウを持つキンレイの強みといえるでしょう。
――スタートアップで注目のメーカーはありますか?
高級冷凍食品を手掛ける「ブレジュ」ですね。フレンチの三ツ星シェフ、ダニエル・マルタン氏の監修というのが最大の特徴。さすがに高価ですが相応のハイクオリティな味わいで、冷凍食品は便利なだけでなくごちそう級のおいしさも楽しめることを世に知らしめたブランドです。
――中長期的に気になるトピックスは?
ひとつは、植物由来の原材料を使ったプラントベースの冷凍食品です。植物性原材料は環境負荷や倫理的な側面などでSDGs的にも礼賛されており、世界的にニーズが高まっています。
そんな中、冷凍食品でもプラントベースが注目されつつあり、メーカーでは「Grino(グリノ)」というブランドが注目されています。たとえばカルボナーラに関しては、ベーコン、卵、生クリーム、チーズといった本来は動物性の食材を、植物性食材に置き換えて商品化しています。
ほかには、イオングループが手掛ける「アットフローズン」、京阪百貨店の「ゴエフ」、液体凍結技術の企業「テクニカン」による「TŌMIN FROZEN」など、冷凍食品専門店が徐々に増えている点も注目ですね。冷凍食品自体の進化とともに市場は拡大しており、販売手法やお店も多様化していくはずです。同時に家庭用の冷凍庫も、より省エネできるモデルへと進化していくでしょう。
今回お話しした内容は、私の最新著書「いますぐ食べたい!冷凍食品の本[レシピつき]」に詳しく載っています。節電のコツについてもイラスト付きで解説していますので、ぜひご一読いただき、上手に電気を使っていただけたらうれしいです。
西川 剛史(にしかわ たかし)
冷凍生活アドバイザー、冷凍食品開発コンサルタント。高校生のころから冷凍食品に興味を持ち、冷凍食品会社に就職。冷凍食品の商品開発などの経験を生かし、現在は冷凍専門家として活動中。冷凍王子としてテレビ番組「マツコの知らない世界」「ヒルナンデス!」「王様のブランチ」「NHKごごナマ」など、その他テレビ、雑誌などに多数出演。
著書『いますぐ食べたい! 冷凍食品の本[レシピ付き]』(自由国民社)