全国各地にある発電所、その数はなんと4000カ所以上。一口に発電所といっても、実は一つ一つ違った個性があるんです。今回は、2019年2月に営業運転を開始したばかりの「石狩湾新港発電所」へ。北海道の電力を支えながら、プロジェクションマッピングやAR(拡張現実)を取り入れた斬新な見学ができるという“今どきの発電所”は、見どころが満載です!
食とエネルギーで世界をむすぶ!“工場萌え”も必見の北海道を支える新たな火力発電所
季節を問わず旅行先として人気が高い北海道。中でも小樽市といえば、道内有数の観光スポットだ。
日本夜景遺産にも数えられる「小樽運河」や、函館・札幌と並ぶ北海道三大夜景を見下ろす「小樽天狗山ロープウェイ」など、見どころは尽きない。
ロマンチックな雰囲気に浸れる小樽運河。石造りの倉庫街をガス灯が照らし始める夕暮れ時に訪れたい(※写真はイメージ)
また、その隣の石狩市は、北海道らしい豊かな自然と海の幸が楽しめる街。全国的に知られる「石狩鍋」の発祥地でもある。
みそ仕立ての石狩鍋は、北海道で古くから愛される郷土料理。石狩市では、元祖の店とされる老舗の料亭をはじめ、市内各所で食べられる(※写真はイメージ)
そんな有名な2つの街の市境に位置する石狩湾新港は、「~食とエネルギーで世界と結ぶ石狩湾新港~」というキャッチフレーズのもと、長期的な視点で港湾や土地の活用策として、大型の食料備蓄拠点やエネルギー拠点等を計画し、開発を進めている。その役割の一端を担うのが、2019年2月に営業運転を始めた「石狩湾新港発電所」だ。
札幌市内から車で走ること40分ほど。広大な港に白い建物群が見えてくる。
厳冬の中でも電気を作り続ける石狩湾新港発電所1号機。2030年までを目途に2号機、3号機も建てられ、全機運転を始めると道内最大級の発電所になる予定だ
発電所全体が大きな壁に覆われて“巨大な箱”のようにも見えるが、実はそれが北海道の発電所らしいところ。
雪から設備を守るため、一般的な発電所では露出しているような部分もすべて建物の中に収められている。早速、中に入ってみよう。
発電所内部に設置された発電機。中央にある発電機を挟むようにガスタービン(左)と蒸気タービン(右)が配置されている
石狩湾新港発電所の要となるのが、この巨大な箱の中に収められているガスタービンだ。
もちろん、常に動いているため、通常は“中身”がどんなふうになっているのかを見ることはできない。だが、ここ石狩湾新港発電所は、きっと“工場愛好家”や“ガスタービンマニア”が抱いているであろう“願い”をかなえてくれる。
それが、運転中のガスタービンの様子等を箱に映して見せる「プロジェクションマッピング」だ。
ガスタービンが収められている箱にプロジェクションマッピングの映像が映し出される。リアルな映像で迫力満点
まず、格納されているガスタービンの姿。そこから外部パーツが分解されていき、ガスタービンの中の構造までもが丸見えに。
次第に機械の奥へ奥へと進んでいく様は、ワクワク感を刺激してくれる。
燃料を燃やして得たガスを膨張させて回転させるガスタービン。ジェットエンジンと同じような構造になっている
ガスタービンの姿があらわになると、火が点き、回転! 燃え盛る炎の映像は、まさか発電所で見られるとは思えないほど迫力満点だ。
それだけではない。プロジェクションマッピングの中では、燃料のLNG(液化天然ガス)の燃焼、タービンや発電機の動きなども分かりやすく紹介される。写真映え&学びにもなる、子どもから大人まで見応え十分の見学必至ポイントになっている。
ガスタービンの運転中の様子を再現した映像はド迫力! 映像の所要時間は3~4分
新しい発電所の“魅せ方”を工夫している石狩湾新港発電所だが、もちろん発電設備も最新鋭。発電効率は世界最高クラスを誇っている。
石狩湾新港発電所は、道内にある火力発電設備の経年化への対応や電源の分散化などを目的として建設された。北海道内の電力を、より確実に安定させる役割を担う発電所として、大きな期待が集まっている。
燃料となるLNGをためる大型の貯蔵タンク(右)。左側に同様のタンクを建設中だ
この、LNGを燃料にする火力発電所は、北海道電力では初めてのこと。
国内最大級の貯蔵量を誇るLNG用のタンクは、天気が良ければ、一般見学で発電所の屋上に上がって見ることができるので、北海道らしいスケールの大きさを感じて欲しい。
新しい発電所らしさは、発電所の“頭脳”である中央操作室にも。
操作室と聞けば、たくさんのスイッチがある巨大パネルが並ぶ部屋を想像するかもしれないが、実際にはとてもシンプルな造りになっている。操作はすべてマウスで行い、スイッチらしいスイッチは緊急時のものだけなのだそう。
中央操作室では、24時間体制で発電所の運転管理を行っている
他にも、発電所の仕組みなどをAR(拡張現実)動画でわかりやすく紹介するPR室など、見学者が楽しんで学べるコンテンツがふんだんに用意されている。
こうした工夫も、広く電気のことを知ってもらいたいという北海道電力の思いの表れなのだ。
PR室の立体パネル。手前の液晶パネルを動かしてパネル上のQRコードに合わせると解説動画が流れる
ちなみに、石狩湾新港発電所で働く所員は、普段から小樽市や石狩市の市民と交流したり、お祭りなどの街のイベントに参加したりと、積極的に地元を一緒に盛り上げていこうとしているそうだ。
施設見学に訪れた地元の小学生たちからの贈られたメッセージ。働く人たちの日々の励みになっているそう
雪が溶け、北海道の大地が緑を取り戻す5月から、2020年の一般見学が始まる。北海道に観光で訪れた際には、ぜひ石狩湾新港発電所に寄り道してみてはいかがだろうか。
石狩湾新港発電所から遠くまでつながる送電線。生活に欠かせない電気を北海道内に送っている
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、現在は石狩湾新港発電所の見学の受付を休止しています。再開時期は公式サイトなどで発表される予定です
■スポットDATA
石狩湾新港発電所
住所:北海道小樽市銭函5-192-1
電話:0133-76-2046(見学受付係)
時間:5~11月の10:00~11:30、13:30~15:00※事前に電話確認、2週間前までに申込書を送付して要予約
休み:土曜・日曜・祝日、年末年始、GW、お盆、降積雪期(12~4月)
受入可能人数:5名~最大60名
https://www.hepco.co.jp/corporate/nextgeneration/ishikari_ps/index.html