日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第33回のテーマは「エネルギー基本計画」。今年は政府が策定する「エネルギー基本計画」が見直され、将来の日本のエネルギー政策の方向性が決まる大事な年。「そもそもエネルギー基本計画って何?」と疑問に思ったConちゃんがエネルギーの専門家に聞いてきました!
Conちゃん、エネルギー基本計画について知る!
今年は、日本のエネルギー政策の土台となる「エネルギー基本計画」が見直される年だという。すでに見直しに向けた検討がスタートしているみたいだけど、「そもそもエネルギー基本計画って、何?」と思ったConちゃん。ということで、今回はエネルギーの専門家に話を聞きました。
竹内「日本はエネルギー資源に乏しい国だから、エネルギーを確保するのがほんとに大変なの。だから、安定して、なるべく安く、そして環境にも配慮したエネルギー(電気)を確保し続けることを目指して、エネルギー政策を考えなければならないの。そのためにまとめる計画なんだよ。この計画は、2002年に施行された『エネルギー政策基本法』に基づいて2003年に初めてつくられ、それ以降は3年ごとに見直されているんだ。今の第6次エネルギー基本計画は、2021年につくられたものだから、ちょうど今、見直しているところだよ」
竹内「エネルギーは、日本の経済や国民生活を支える大事なもの。特に電力を確保し続けるには 、発電所や送電線などを整備していかないといけないの。そのためには、将来どのくらい電気が必要か長期の見通しが大事になってくるのよね。だから、政府として、エネルギーを取り巻く国内外のいろんな情勢を踏まえたエネルギー政策を計画的に進めるために、方向性を示しているの」
竹内「エネルギー問題を考えるには、『安全性(Safety)』を大前提に、『安定供給(Energy Security)』と『経済効率性(Economic Efficiency)』と『環境適合(Environment)』を同時に実現する『S+3E』という考え方が大原則になっているよね。つまり、将来にわたって、電気をできる限り安定的に、かつできるだけ安く使えるようにするために、火力、原子力、再生可能エネルギーといった発電方法をどのように位置付けて活用していくかや、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、どう取り組んでいくかといったことがまとめられているんだよ」
竹内「繰り返しになるけど、エネルギーを確保することは、日本にとってはすごく大事なことなの。日本は、島国で近くの国と送電線がつながっていないから、電気をどうしても国内の発電所でつくらないといけない。だけど、日本には火力発電の燃料となる石炭やLNG(液化天然ガス)などの資源がほとんどないから、海外からの輸入に頼っているの。万が一、それらが輸入できなくなると、電気が作れなくなってしまうの。電気がなければ、照明を灯すこともできないし、電車やパソコン、携帯電話、水道なども使えなくなってしまう。エネルギーで困らないために、将来を見据えた計画を立てているんだ」
Conちゃん、エネルギー基本計画の役割を知る!
竹内「ただ、少しずつ変化もあるの。2018年に作られた第5次エネルギー基本計画までは、景気動向や10年後の人口の推移などを考えて、必要な電気がどれくらいで、その電気をどういった発電方法で作っていくかを計画していたんだ。現状を踏まえて、将来に対する計画を立てるという意味合いが強かったの。でも、今はそうじゃないんだよね」
竹内「2021年につくられた第6次エネルギー基本計画は、CO2排出量の削減目標とつじつまが合うことを優先的に考えて計画が立てられたの。世界では、2050年までにカーボンニュートラルを達成しようという流れになっていて、日本も同じ目標を掲げているんだ。そのためには、2030年や2035年には今よりもCO2の排出量を半分くらいに減らさないといけないの。そうすると、化石燃料を燃やして発電する火力発電の使える量が限られてくるから、必要な電気は再生可能エネルギーや原子力で賄わないといけないのよね。ただ、今の再生可能エネルギーの開発状況や原子力発電の再稼働状況などを考えると、こんなに化石燃料の利用を抑えてしまって本当に必要な電気を賄えるのかなと思うよね。つまり、今の第6次エネルギー基本計画は、日本の足元の状況から検討するものではなくなり、目標をもとに考えられているということね」
Conちゃん、エネルギー基本計画の見直しの方向性を聞く!
竹内「今の第6次エネルギー基本計画には、『野心的(できるかわからない)』って言葉がたくさん使われていて、これまでの計画と比べると本当にできるのかなってConちゃんが思うのもよくわかるよ。エネルギーは私たちの生活を支える生命線なので、その計画の中で『野心的』と言われると不安にもなるよね。でも、高いCO2削減の目標を掲げて、それを前提に考えることで、いろいろな企業が技術の開発や新しいビジネスの開発にチャレンジすることになるんだよね。カーボンニュートラルの実現を目指すことは世界的な流れだから、CO2を減らす技術は世界で売れることにもなるよね」
竹内「CO2の削減目標を最優先に考えた上で、原子力と再生可能エネルギーの活用・導入がものすごく進んだことを想定したパターンと、それなりに進んだことを想定したパターン、うまく進まなかったことを想定したパターンみたいにいくつかのシナリオを示して、国際情勢の変化などに柔軟に対応できるように考えるんじゃないかな。どんな社会を目指すのか、国民に問いかけることにもなるかもしれないね」
21世紀に入り策定されたエネルギー基本計画が、日本の屋台骨を支えるエネルギーの在り方に大きな影響を及ぼしていることを知ったConちゃん。それが今、まさに見直されようとしている! 今回の見直しに向けた議論は、何がポイントなのか? 次回、後編でリポートしていきます!
取材協力:竹内純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員/U3innovations合同会社共同代表/東北大学特任教授。専門はエネルギー・温暖化政策。東京大学大学院工学系研究科にて博士(工学)取得。慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、東京電力株式会社入社。主に環境部門を担務。2011年の福島第一原子力発電所事故を契機に独立し、研究者となる。国連気候変動枠組条約交渉に10年以上参加するほか、内閣府規制改革推進会議やGX実行会議など多数の政府委員を務めつつ、大学・研究機関においてエネルギー・温暖化政策の研究・提言に取り組んでいる。
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