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ダムの絶景を見ながら食べられる!「黒部ダムカレー」のキーパーソンに聞くこだわりメニューと自宅でできる盛り付け方(後編)

2020.02.28

全国各地のダム付近で続々と誕生し、盛り上がりを見せている「ダムカレー」。ダムがあるからこその地元グルメであり、町おこしの起爆剤としても期待されている。そんなダムカレーの中で特に有名なのが「黒部ダムカレー」だ。前編では、黒部ダムカレー推進協議会の会長・柏原清さんに黒部ダムカレー誕生の歴史についてうかがった。後編では、黒部ダムを眺めながら食べられるカレーメニューと、自宅で楽しめる盛り付け方を聞いた。

>>柏原さんが黒部ダムカレーの誕生秘話を語る!インタビュー前編はこちら

いま食べられる黒部ダムカレー

富山県にある全国的に有名なインフラ観光地「黒部ダム」。その中にダムカレーを食べられる「黒部ダムレストハウス」はある。

「黒部ダムカレー」という名前でひとくくりにされているものの、実はルーの味で、「黒部ダムカレー」(1100円)、「アーチダムカレー」(900円)、「お子様ダムカレー」(900円)という3種類のメニューに大きく分けられている。それぞれの特徴を誕生から今までを見てきた黒部ダムカレー推進協議会の会長・柏原清さんが教えてくれた。

「アーチダムカレーは、トッピングを追加しましたが、見た目は昭和40年代当時に生まれたアーチカレー、ほぼそのままです(※アーチカレー誕生の歴史が分かる前編はこちら)。とはいえ、味はその当時よりも各段に美味しくなっていると思います。昔、私が初めて食べたときに、『よくあるカレーの味っぽい』と感じてしまいまして…それから少しずつ味を改良してきました」


中辛のビーフカレー「アーチダムカレー」(900円)。一口食べれば、どこか懐かしさを感じる

鮮やかな緑色が目に飛び込む「黒部ダムカレー」が誕生したのは、2007~08年ごろ。今では最寄り駅の扇沢駅でも食べられるが、最初にこの黒部ダムレストハウスで提供が開始されたそうだ。

「全てのメニューの中で圧倒的に売れていますね。黒部ダムカレーも、本格的な味を追求するために、これまで随分と味を変えてきました。辛みをマイルドにするためにタマネギソテーの量を増やしたり、きつ過ぎたニンニクを減らしたり、万人受けするために辛さをマイルドにしたり。本当にいろいろやったので、味はかなり熟成していると思います」


これぞ看板メニュー!辛口グリーンカレーの「黒部ダムカレー」(1100円)は本格的な味わい。緑色のルーはホウレン草ペーストで色付けされている

ここ2~3年は黒部ダムカレーの味に改良は施されておらず、現在の味はもう完成形とも言えるようだ。3つ目の「お子様ダムカレー」は、小ぶりで甘口、家族連れに人気を博しているという。

「ピーク時には1日にだいたい700食、最高で1000食出たという記録も残っています。黒部ダムレストハウス以外でも、大町市内の飲食店では常時食べられますし、最近では、富士急ハイランドで開催されたグルメイベントや、大阪府にある関西電力本店の食堂、兵庫県のゴルフ場など、期間限定でさまざまな場所で食べることもできます」

ちなみに、長野自動車道の安曇野インターチェンジにあるカレーハウスCoCo壱番屋でも食べられるそうだ。


黒部ダムレストハウスがあるのは、ダムのすぐそば。1階はお土産店、2階はレストランになっている

「いろいろな場所の黒部ダムカレーを探すのも楽しいと思いますが、できればここに来ていただき、黒部ダムを見ながら食べてもらえるとうれしいですね!」

黒部ダムカレーに受け継がれる昭和の遊び心

ここで、遠い、時間がないなど、どうしても黒部ダムに行けない人のために、黒部ダムカレーの盛り付け方を教えてもらった。

「まず重要なのはダムの形。金型なしで作るのはなかなか難しいですが、もし自宅で作りたいのであれば、ご飯にラップを巻いて、手で成形していけばできると思います。ただ、黒部ダムは『アーチ式』と『重力式』のハイブリッドダムなんです。中央部がアーチ式で、ウイング(両サイド)が重力式。ウイングはご飯の重さを生かして厚めに、中央はアーチを描くようにする。中央から作り始めればやりやすいと思います」


黒部ダムレストハウスでは、オリジナルの金型でご飯を成形。ご飯には、硬すぎず柔らかすぎないよう、絶妙な圧力をかけるそう

前編でお伝えした通り、本場の黒部ダムカレーには、カレールーの作り方にルールはない。つまり味はお好みでOKだ。ただ、少しシャバシャバにした方が、ご飯に穴を開けてカレールーを流す『放流』もしやすくなるという。

「もう一つ重要なのが、カレールーを入れる場所。たまに個人で作られた方の盛り付けを見るのですが、間違われていることが多いんです。本来はダム堰堤(えんてい)のアーチの外側にカレーを入れなければいけません」

ダムカレーのご飯を成形すると、ついつい内巻きになっているアーチの内側にカレーをよそいたくなる人が多いそう。これは、アーチ式のダムカレー作りで一番やってはいけないポイントなのだ。


カレーのルーはダム堰堤のアーチの外側に。よそうときは“水あふれ”にも要注意

ダムの“施工”が済んだら、次は黒部ダムの景観を再現していく。ポテトサラダは放水を、キャベツは水しぶきを、パセリは黒部峡谷の森を、カツは遊覧船を、それぞれイメージしているという。


下からキャベツ、ポテトサラダ、横にパセリを添えていく。カレーらしくラッキョウも忘れずに


黒部ダムレストハウス特製「黒部ダムカレー」にはカツが2個。遊覧船をイメージしている

「ちょうど黒部ダムの大階段から見た景色がお皿の上に広がる感じですね。一度、現地を見てもらえれば、すぐにイメージできると思います。黒部ダムカレーと名前を変えてからは私がずっと責任者として担当してきましたが、これまで7~8人が歴代このカレーを引き継いできました。これから引き継いでくれる後輩にも、黒部ダムカレーをさらに進化させてもらえたらいいなと思っています」

変化し続けることが大事と言う柏原さんだったが、唯一変えてはいけない部分もあるという。


お話を聞かせてくれた、黒部ダムカレー推進協議会の会長・柏原清さん。黒部ダムにあるお土産も多数考えたアイデアマンでもある

「盛り付けの形状など、基本の形だけは変えちゃいけない。これからも、昭和に生まれて今に残る、先輩たちのこだわりや遊び心を大切に引き継いでいきたいです」

黒部ダムレストハウス

住所:富山県中新川郡立山町芦峅寺ブナ坂11 国有林内

電話:080-2105-4886

時間:レストラン9:00~15:00※11月5日から10:00~14:30
   売店7:30~17:00※11月5日から8:30~16:00

定休日:なし