EXILE/EXILE THE SECOND パフォーマー・俳優 橘ケンチさん
EXILE、そしてEXILE THE SECONDのパフォーマーとして活躍する橘ケンチさん。2023年10月には、所属するLDH JAPANのSocial Innovation Officer(ソーシャルイノベーションオフィサー)に就任し、社会貢献や地域共生に関する活動にも力を入れています。大学時代は毎日ダンスに打ち込みながら、理工学部で電気自動車の研究をしていた橘さん。学生時代の影響もあり、今は電気やエネルギーへの関心も高まっているそうです。そんな橘さんに、これまでの歩みやソーシャルイノベーションオフィサーとしての活動、電気に対する思いについて伺いました。
高校3年生でダンスに出会い、踊ることにのめり込んでいった大学時代
――――――はじめに、ダンスを始めたきっかけを教えてください。
はじめてダンスに興味を持ったのは高校3年生のときです。体育祭の応援としてダンスをすることになり、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ)の人気企画である「ダンス甲子園」のビデオを借りて、みんなで一緒に学校の視聴覚室で観ました。その時に、兄弟で踊っていたLL BROTHERSさんのダンスに目が釘付けになり、「これがヒップホップダンスというものか…」とものすごく衝撃を受けて、それからダンスに夢中になりました。体育祭が終わってからもその熱は冷めず、自宅でビデオを観ながらLL BROTHERSさんの真似をして練習していました。大学に入ってからはダンススクールに通い始めて本格的にダンスをするようになり、さらにのめり込んでいきましたね。
子どもの頃から運動は得意でサッカー、バスケットボール、テニスを経験。高校でダンスに出会ってからはダンス一筋に
――――――「プロのダンサーになりたい」という思いでダンスを続けていたのですか。
全くそんな気はありませんでしたが、大学ではダンスに夢中でした。自分たちでダンスチームを作って、毎日のようにクラブで踊っていましたね。週1回スクールに通って、そこで習ったことをひたすら練習して体に覚えこませ、翌週また新しいことを教わる。そうやって自分の技術がアップデートされていく感覚がただ楽しかったんです。
でも、大学3年生くらいになると、当たり前のようにみんな就活を始めるんですよ。その時はものすごく焦りました。一緒に踊っていた仲間たちも大学にスーツを着てくるようになって、僕は「ダンスやめるなよ。スーツなんか着るなよ」って引き止めてました(笑)。“自分は好きなことを突きつめて生きていこう”と決めたのはその頃ですね。将来の見通しは全く立っていませんでしたが、好きなダンスをやめてまで企業に就職するという考えはなく、ダンスに懸ける情熱は日々増すばかりでした。
EXILEとの運命的な出会いから、その一員へ
――――――橘さんとEXILEとの出会いについて教えてください。
2004年にEXILEがミュージカルを初めて開催することになり、若手ダンサーをサポートメンバーとして加えることになったんです。その時に声をかけてもらったのが、最初の出会いですね。その縁でEXILEの横浜アリーナ公演を観に行き、1万人以上の観客が熱狂する光景を目の当たりにしました。「こんな世界があるのか」と圧倒されましたね。当時僕が踊っていたようなクラブは、多くても200〜300人くらいの収容数なので、全く規模が違うわけです。もちろん、EXILEメンバーのダンスの上手さも桁外れ。その瞬間から、自分もあんなグループに入りたいという夢が生まれました。
その後はミュージカルへの参加をきっかけに、MATSUさん(松本利夫さん。当時はEXILEパフォーマーとして活動)が始めたアパレルブランドの店員として働かせてもらうことになりました。昼間は服屋のバイトをしながら、夜はクラブでダンスを練習したり、ショータイムに出演したりする生活を3年くらい続けましたね。いろんな縁が繋がって、今に至っていると思うと感慨深いです。
2024年に開催されたライブツアー「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2024 "THE FAR EAST COWBOYZ"」では、圧巻のダンスで観客を魅了(提供:LDH JAPAN)
「日本酒好き」をきっかけにスタートした地域共生への取り組み
――――――2023年にLDH JAPANのSocial Innovation Officer(ソーシャルイノベーションオフィサー)に就任されました。どのような役割を担っているのでしょうか。
ソーシャルイノベーションオフィサーとして、LDH JAPANの社会貢献や地域共生に関する活動を推進しています。僕自身がそういった活動に携わるようになったきっかけの一つは、2016年頃に日本酒にハマったことでした。日本酒って、その地域に銘柄が一つ根付くと、周りに地元の農産物や海産物といった食、そして工芸品などが自然と集まってくるんですよね。地域の伝統や食文化の中心的な役割を果たしているんですよ。日本酒を通じ、その土地ならではのものを見て、触れて、食することが本当に楽しくて。時間を見つけては全国の酒蔵を巡るようになり、ありがたくも各地にいろんなご縁ができたんです。
もともとLDH JAPANでは、エンターテインメントの活動に留まらず、東日本大震災以降、「ダンスで日本を元気に!」をテーマに掲げ、東北の子どもたちと「Rising Sun」を踊る「夢の課外授業/中学生Rising Sun Project」をはじめ、さまざまな社会貢献活動を行っています。そんな中で、各地の酒蔵巡りを通じて得た、地域を知るという経験や人脈も地域共生に活かせるのではないかと、ソーシャルイノベーションオフィサーを担うことになりました。
LDH支援プロジェクト「夢の課外授業/中学生Rising Sun Project」開催の様子(提供:LDH JAPAN)
――――――ソーシャルイノベーションオフィサーとして、これまでどのような活動をされてきたのでしょうか。
各地で活動していますが、現在のように本格的になった契機は、福井市との取り組みです。2021年に「福井市 食のPR大使」に任命いただき、様々な名産品の魅力を発信するお手伝いをさせてもらったんです。EXILEとのコラボイベントやテレビ・雑誌でのメディア企画、福井の蕎麦をプロモーションする食フェアなどを行いました。こうした取り組みが、LDH JAPANがエンタメ企業だからこそできる、「地域に寄り添った盛り上げ方」のロールモデルになっています。LDH JAPANの所属メンバーがそれぞれの出身地で観光大使を務めることも多いんですよ。
LDH JAPANとして、受け身ではなく主体的に地域を盛り上げる活動のサポートをしていきたいと考えています。そのために僕も現地に足を運び、「その土地にどんな魅力があるのか」「地域の方と一緒にどんなことができるのか」を考えています。今後はますますそういった取り組みが増えていきそうです。
福井市×LDH JAPANの取り組みの一環として、2024年11月に台北でプロモーションを開催した(提供:LDH JAPAN)
――――――パフォーマーとソーシャルイノベーションオフィサーの仕事の両立は大変なのでは?
大変そうに見えるかもしれませんが、すごく楽しいんですよ。表方としてライブステージに立ちつつ、裏方として地域プロデュースに携わることにより、いろいろな相乗効果を感じています。EXILEパフォーマーとしての知名度を活かして、地域のコアな魅力、お住まいの方々でも気づいていないような隠れた魅力を発掘してPRするというのは、今の立場だからこそできることだと思っています。
もう一つ、自分自身にとって良かったのは、5年後、10年後の自分の姿がよりイメージしやすくなったこと。ダンサーはアスリートと同様に体が資本なので、先々はどこかで表舞台から身を引くタイミングが来ます。その次のセカンドキャリアを考えた時に、ダンス以外にも自分の力でできることがあるのは大きな強みになりますよね。
セカンドキャリアの開拓は自分のためでもあり、自分の後に続く若いダンサーたちのためでもあると話す
そして、その強みをどう作っていくのかは、自己プロデュース次第だと思っています。与えられたものに乗っかるだけでなく、周囲を巻き込みながら自分で開拓して、日々学んでいくことが大事です。自分の好きなことを深掘りして、その延長線上に多くの人々や社会のためになることが見つかれば、築いた人脈を活かしつつビジネス化することで、自分ひとりで携わるのではなく、もっと大きな規模でチャレンジできる可能性があると思います。アーティストやダンサーとして活動する若い子たちには、「自分の好きなことはバンバン発信した方がいいよ」といつも言っていますね。
いつか実現できるかも!? 思い描くのは「再生可能エネルギー」を利用したライブ
――――――学生時代は、明治大学理工学部電気電子工学科で電気自動車の研究をされていたそうですね。
当時はまだ電気自動車が世の中に走っていなかった時で、純粋に面白そうだなという感覚で専攻したんです。研究室にゴーカートのようなテスト車があって、周りにパソコンを積みあげ、カチャカチャ打ち込んでプログラミングしながら動かしていました。でも正直に言うと、大学時代はダンスに夢中で、あまり真面目な学生ではなかったんです。電気自動車の普及が進む今となっては、もっとしっかり勉強しておけば良かったな…と後悔しています(笑)。電気自動車にはやっぱり将来性を感じますよね。特に、ソーシャルイノベーションオフィサーに就任してからは、環境や社会全体に目を向けるようになり、カーボンニュートラル達成を目指す中で電気自動車が果たす役割や、当たり前に使えている電気の大切さについても考えるようになりました。
スクールに通いダンスに夢中だった大学時代。「勉強はあんまり…」とはにかみながら話す橘さん
最近では、酒蔵にソーラーパネルを設置し、太陽光発電で作った電気を活用しているケースを目にします。もともと日本酒は寒い季節に造られていたものですが、今では酒蔵の空調や製造過程での温度調節を行う技術が発達して、一年中造れるようになっています。ただ、裏を返せばそれだけエネルギーを使うということ。安定的に日本酒を造り、品質を保って貯蔵するためには多くの電気を使うため、サステナブルな仕組みをつくっていこうという考えが広まっています。
もちろん、僕たちが手掛けるエンターテインメントも、電気がなくては成り立ちません。ライブではいかに非日常感を味わってもらうかが勝負なので、照明やレーザーライトを使って会場を派手に照らします。そういった演出も全て電気のおかげだと考えると、電気がどのように作られているのかまで知るべきだし、真剣に向き合わなければいけないと考えています。そのきっかけとして、例えばカーボンニュートラルを意識して、再生可能エネルギーだけを利用したライブなんて開催できたら面白いかもしれませんね。
――――――再生可能エネルギーだけを使ったライブですか!実現したら話題になりそうです。
エンタメに社会的な意義を落とし込んで表現しようとするときには、伝えたいメッセージをどのように伝えるかが、大きなポイントです。僕たちがライブをつくるときに一番大切にしているのは、テーマとストーリー。再エネを使ったCO2フリーのライブを実現して、「エネルギーの現状に向き合おう」「カーボンニュートラルを実現しよう」といったメッセージを多くの方に伝えていくとなると、僕たちの知識もまだ足りていない状況です。発信者の責任として、これからもっとエネルギーの課題に向き合い、学んでいきたいですね。
万博はより良い世界をみんなで目指すきっかけに!
――――――2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の催事施設愛称の選考委員も務めていらっしゃいました。大阪・関西万博にどのような期待を寄せていらっしゃいますか?
いよいよ開幕が近づいてきてワクワクしています。大阪・関西万博は、世界の最新テクノロジーを使った展示など、少し先の未来が見られる場所なので、現地でどんな体験ができるのか今から楽しみです。イベントが行われる、ホールやアリーナなど4つの催事施設の愛称選考に僕も関わらせていただいたので、その施設にも実際に行ってみたいです。世界各国からたくさんの人が大阪に足を運んで、日本を知ってもらえることも嬉しいですよね。万博の会場を訪れた人が未来への希望を感じて、みんなで世界をより良くしていこうという流れが生まれればいいなと願っています。
「大阪・関西万博の会期中は何度も足を運びたい」と開幕を心待ちにしているそう
――――――最後に、橘さんの今後の展望について教えてください。
これからもできる限りダンサーとして活動を続けていきたいです。長年支えてくださるファンの方々のためにも、この身が朽ち果てるまで踊り続けたいですね。ファンとの絆が生まれるライブは、本当に大切な場所だと感じています。
ソーシャルイノベーションオフィサーとしては、今以上に地域の方々と深く向き合っていきたいです。LDH JAPANがエンタメの力を最大限に使って地域を盛り上げる――。こうした活動が10年、20年と続いていけば、取り組みの内容も深化するでしょうし、海外に向けたプロモーションなど、規模の大きなイベントを開催する機会も増えると思います。地域が元気になることで、ひいては日本も元気になっていく。それが今、僕が思い描いている未来ですね。
パフォーマーやソーシャルイノベーションオフィサーとして、エネルギッシュに様々な活動を行う橘さん。幅広い活動に一貫していることは、将来を見据えて行動する前向きな姿勢。周囲の方々も巻き込み、地域や社会にまっすぐ向き合う橘さんは、今後ますます日本を元気にしてくれること間違いなしです!
橘ケンチ
たちばなけんち。EXILE、EXILE THE SECONDのパフォーマー、俳優。2007年に二代目 J Soul Brothersのメンバーとして抜擢され、2009年にパフォーマーとしてEXILEに加入。2012年からは、EXILE THE SECONDとしても活動。日本酒に造詣が深く、著書に『橘ケンチの日本酒最強バイブル』(宝島社)など。2025年3月29日より『EXILE LIVE TOUR 2025 “WHAT IS EXILE”』を開催。
オフィシャルホームページ:https://www.ldh.co.jp/management/kenchi/
企画・編集=Concent 編集委員会
★さらに「日本のエネルギー」について知りたい方はこちら!
エネルギーの「これまで」と「これから」-エネルギーに関するさまざまな話題を分かりやすく紹介-(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)