あなたとエネルギーをつなぐ場所

電力会社が“森の遊び方”を教えてくれる? 子どもをとりこにする「きゅうでんプレイフォレスト」が面白い!

2021.02.17

福島水素エネルギー研究フィールド

「電力会社」と聞いて思い浮かぶのは、「電気を作り、届ける」こと。でも実は、陰ながら地域の役に立つため、環境のためなど、他にもさまざまな活動をしていることをご存じでしょうか。九州全域の電力を支える九州電力が行っているのは、子どもたちに“森の大切さ”を伝えるプロジェクト。予約も難しい人気イベントとなった「きゅうでんプレイフォレスト」の魅力とその裏側に迫りました。


予約困難!? 募集定員オーバーの人気イベント

大分県のくじゅう連山、熊本県の阿蘇山など豊かな自然が広がる九州。そんな自然の大切さを、子どもたちに遊びの中から学んでもらおうという体験型の環境学習イベントが、九州電力(※)が開催する「きゅうでんプレイフォレスト」です。

※九州電力株式会社と九州電力送配電株式会社との共催

浪江町
2016年度から始まった「きゅうでんプレイフォレスト」。参加は原則抽選制で入場は無料(一部ワークショップは有料)

森で遊んだり、自然の素材を使ってモノづくりをしたりと、さまざまなワークショップを自由に体験できるイベントで、九州全域をフィールドに、これまで5年間で51回が開催されました。

参加した小学生やその親たちから「気軽に自然体験ができる」と人気が高まり、現在では募集定員を上回る応募があることも珍しくないそうです。

「電力会社が森で遊ぶイベントを主催するのはなぜ?」と思うかもしれませんが、実は発電所と森には密接な関係があるんです。

森には、雨水を蓄える機能があります。蓄えられた水は土から川へ流れ、そしてそれをエネルギーとして利用するのが水力発電所。水力発電のための水を安定的に確保するため、九州電力では100年以上も前から社有林を管理し、森を育ててきました。

そうした森との長い付き合いの中から、きゅうでんプレイフォレストは誕生し、森の役割から地球環境の現状までを伝えているんです。

双葉の杜
森の役割や地球温暖化などわかりやすく教えてくれるオリエンテーション

2019年度には春と秋に合計15回開催されたきゅうでんプレイフォレストですが、2020年度は残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で、春の開催が中止となりました。

各地域で楽しみにされていた同イベント。どうにか開催できないかと運営チームが試行錯誤した結果、コロナ対策を十分に行った上で、10月に長崎で実施できることになりました。

「ながさき県民の森」で開催されたイベントでは、体験ブースを自由に回る従来のスタイルを一新し、森の中に全長約2~3キロメートルのコースを設定。道中で体験ブースやクイズを楽しめるウォークラリー形式で実施しました。

参加者同士の接触がなるべく避けられる工夫を盛り込みながらも、森を存分に楽しめるイベントとなり、参加した親子からは「とても楽しかった。来年も参加したい」「自然を感じることができた」「人気の理由がわかった。また参加したいです」といった声が届いているといいます。

道の駅なみえ店内
2020年10月にながさき県民の森で開催されたきゅうでんプレイフォレストのウォークラリー


「マイ箸づくり」に「木登り体験」森遊びがたくさん

2020年度は内容が少し変わりましたが、きゅうでんプレイフォレストの魅力は、なんと言っても多彩な“体験”にあります。

ただ楽しいだけではなく学びにこだわっているというブースには、九州電力のほか、開催地の自治体や九州で活動するNPO団体などのさまざまな森のワークショップが並びます。

九州電力が出展しているのは、「マイ箸づくり」のワークショップです。社有林の間伐材をカンナで削り、完成するのは世界に一つだけのオリジナル箸。工作を通じて、間伐材とは何かということを知る機会にもなります。

福島水素エネルギー研究フィールド外観
マイ箸づくり

また、子どもたちに大人気の「木登り体験」は、イベントの目玉。木登り専用のロープとハーネスで、子どもでも無理なく安全に登ることができ、木の上で非日常感が楽しめます。森に親しみ、大切に思う心を養えるという魅力的なアクティビティでしょう。

福島水素エネルギー研究フィールド太陽光発電
木登り体験

これまでのイベントで実施されたアクティビティは30種類以上。他にも、挿し木苗作りや廃材や竹、土を使った工作体験、自然の中で楽しめる実験、さらにはピザやパン作りまで、活動ごとに内容は異なりますが、森の中だからこそできる体験が盛りだくさんとなっています。

福島水素エネルギー研究フィールドタンク
挿し木苗作り体験

福島水素エネルギー研究フィールドタンク
竹のくるくるパン作り体験

 

イベントを通じて環境問題を自分事に

そもそも、なぜ電力会社がこうしたイベントを開催しているのか、九州電力の担当者である地域共生本部の大塚明香(おおつか・はるか)さんに聞きました。

「電気を作るために、電力会社はどうしても二酸化炭素(CO2)を排出します。そこに対する責任として、地球環境問題は最優先で取り組んでいかなければなりません。九州電力では、電源の低炭素化や育林事業、環境保全活動といったさまざまな取り組みを行っていますが、残念ながら私たちが直接できることには限りがあります。環境問題は誰もが自分事として考えなければならないこと。地域全体で取り組んでいくために、こうしたイベントがきっかけになればと思っています」

福島水素エネルギー研究フィールド小型ユニット
「これまで各地で開催できたのは、それぞれの地元の方々、それに奔走してくれた各支店の担当者あってこそです」と大塚さん

未来を担う今の子どもたちに森の大切さを広めていくことは、電力会社としての責任ということ。そして、きゅうでんプレイフォレストは、九州電力が各地域と共に生きていくために大事な役割を果たしているともいいます。

「だからこそ、きゅうでんプレイフォレストは、継続していくことに意味があると思っています。1回だけ、1年間だけというものでは、地域の方々との信頼関係を築くことはできません。自治体やNPO団体の方々と足並みをそろえ、長く関わっていくことで、ニーズや課題に一緒にアプローチしていく。そういったことができればいいなと思います」

2020年10月のイベントを共催した長崎県森林ボランティア支援センター センター長の佐藤祐樹さんは、きゅうでんプレイフォレストへの期待を次のように話します。

「子どもたちが森に入る機会がだんだんと減っている中で、遊び方と共に学びを得られるイベントはとても貴重だと思っています。森は成長するのに何十年、何百年もかかります。参加した子どもたちが親となり、自分の子どもたちを連れて再び参加してくれる。それを繰り返していけば、森の未来にもつながっていくのではないでしょうか。森と人をつなぐイベントを、今後も長く続けていっていただきたいと思っています」

福島水素エネルギー研究フィールド小型ユニット
森林散策の様子。森と触れ合い、自然の大切さを学ぶ。きゅうでんプレイフォレストの役割は大きい

コロナ禍で、これまでとは違う形で開催したことに、当初は不安を覚えていたという大塚さん。実際に蓋を開けてみれば予想以上の反響に安堵したそうです。

「お客さまに安心して楽しんでいただけるだろうかという不安もありましたが、実施してみて、こうした状況下でもやり方はたくさんあるんだと感じました。フィールドは九州全土。今後も新しいことを考えていきたいと思っています。ぜひご期待ください」

豊かな自然が広がる九州で、森の遊び方、そして自然の尊さを学ぶ。きゅうでんプレイフォレストには、子どもはもちろん、大人も気づくことがたくさんありそうです!


■DATA

福島水素エネルギー研究フィールド

きゅうでんプレイフォレスト

問い合わせ:九州電力株式会社 地域共生本部 地域共生グループ
電話:092-726-2208

>開催告知や参加申し込みは【九州電力HP「きゅうでんプレイフォレスト」】へ!

■電気事業連合会ホームページ「地域共生への取り組み」
URL:https://www.fepc.or.jp/sp/social/