私たちの暮らしに欠かせないエネルギー。便利な暮らしを支えてくれるエネルギー業界の現場では、女性も重要な戦力として活躍しています。彼女たちがどんな仕事をしているのか、どんな思いを持っているのか、その仕事ぶりにスポットを当てます。プライベートとのギャップにも注目!
【今月の密着人】
中国電力株式会社 電源事業本部 石炭灰有効活用グループ 立花美咲さん(23歳)
電源事業本部石炭灰有効活用グループ所属の立花さん。現在の部署に配属されて半年足らずだが、本社でのデスクワークや発電所への出張など、忙しい毎日を送っている
海と山に囲まれ、「水澄みの里」と称される島根県浜田市三隅町(みすみちょう)。白砂青松(はくしゃせいしょう)の日本海沿岸の景観に溶け込む建屋が印象的な中国電力・三隅発電所は、国内最大級の発電設備を持つ石炭火力発電所だ。
中国電力は、「省エネルギー・省資源型の発電所」をコンセプトに、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進にも積極的に取り組むなど、資源を有効活用する循環型社会の形成に力を入れている。その一環として行っているのが、石炭灰を使った製品の研究開発と製造。この業務を推進するグループに立花さんは所属している。
三隅発電所内、石炭を貯蔵する世界初の大型鋼製角型集合石炭サイロ。これにより炭塵(たんじん)飛散防止対策など、環境保全対策も抜かりなし
中学校を卒業後、地図に残るような仕事がしたいという思いを抱き、地元の高等専門学校の土木建築工学科へ進学。
立花さん「入学当初は建築志望だったんです。でも、いろいろと学ぶうちに土木方面への興味が芽生え、4年次に進級するタイミングで土木を専攻するようになりました」
抱いた思いを胸に就職活動をした結果、縁あって中国電力へ入社した。高専での学びを生かせる土木課へ配属となり、約3年間は水力発電所の運営・管理に励む毎日だった。
学生時代から環境問題や再生可能エネルギーに興味があったという立花さん
2018年2月、立花さんは自身が希望する電源事業本部石炭灰有効活用グループへ配属されることになる。石炭灰とは、火力発電を行う際に発生する灰のこと。中国電力では、大量に発生する石炭灰を使った製品の研究開発に力を入れており、その業務を担っているのが、立花さんが所属している石炭灰有効活用グループだ。
立花さん「業務範囲は結構幅広いんです。石炭灰製品の品質確認はもちろん、製造設備の維持管理や活用状況のモニタリング調査、製品のPRにも携わっています」
石炭火力発電で燃料となる石炭、発生する灰、Hiビーズ(写真中央)。中国電力での火力発電に伴い発生する石炭灰は年間約70万トン(2017年度)。その20%にあたる約14万トンの製品化に成功している
中国電力が手掛ける石炭灰製品のなかでも、環境を修復する資材として脚光を浴びているのが「Hiビーズ(ハイビーズ)」だ。石炭灰にセメントと水を混ぜて造るこの製品は、海や河川における悪臭の原因となる硫化水素や、赤潮を引き起こす窒素やリンの発生を抑える特性がある。
三隅発電所の敷地内にあるHiビーズの製造場所。発電所のボイラーから電気集じん器で集められた石炭灰は、この設備でセメントと水を混ぜられて、Hiビーズに仕上げられている
Hiビーズの主原料は石炭灰のため、目に見えない細かい穴がたくさんある構造で、石よりも軽いのが特徴。また、軽いだけでなく、手では砕けない程に硬い
立花さん「通常は、広島にある中国電力本社でHiビーズの製造に関するレポートをチェックするなど、マネージメント業務が中心ですが、多いときは週に1度、三隅発電所を訪れ、現場担当の方々とのミーティングや設備の修繕時の立会いなどをしています」
三隅発電所への出張の際は、Hiビーズの製造に携わっている部署と綿密にコミュニケーションを図る
Hiビーズは島根県が認定する「しまねグリーン製品」に選ばれるなど、現代の環境問題を解決する一助になる製品として、行政などからの期待値は高い。
島根、鳥取にまたがる汽水湖(きすいこ)、中海(なかうみ)の再生事業で、その効果は大いに発揮された。中海の一部では、もともと生息していた二枚貝がごく限られた区域でしか確認できないほど湖底の水質が悪化していたが、Hiビーズを湖底に投入することで水質の改善に成功。再び二枚貝が生息するようになるなど、着実に成功事例を増やしている。
立花さん「石炭灰製品は、徐々に活用事例が増えてきているものの、認知度はまだまだ。だからこそ、私たちが活用状況のモニタリング調査を行い、その結果を学会などで発表することが石炭灰製品の用途拡大につながると信じています」
土木学会で研究発表する立花さん。現在のHiビーズは、海砂の代替材としての使用が主用途だが、アサリなどの二枚貝の生息基盤として水産分野への展開にも力を入れている
石炭灰有効活用グループに配属されて、わずか半年ほどの立花さん。2018年5月に開催された土木学会中国支部での研究発表が優秀賞に選ばれるなど、携わった仕事が認められる機会に恵まれているという。
立花さん「土木学会で発表した資料は、上司や周りの方々に何度も添削していただき、2カ月ほどかけて完成させた力作です。石炭灰製品を全く知らない方にもしっかりと理解していただけるように、分かりやすい言葉を使ったり、図を入れたり、試行錯誤して作成した資料でした。それが優秀賞受賞という形で評価されたことは、それ以降の業務を進めていくうえで大きなモチベーションになっています」
現在は、より高いレベルの業務に携われるように2級土木施工管理技士の資格取得を目指している。
立花さん「今の部署の仕事をまっとうするのはもちろんですが、いろいろな分野を経験して常に成長し続けていきたいですね」
出張での移動が多いため、仕事ではビジネスカジュアルスタイルが多いそう。後ろにそびえるのは国内最大規模の出力を誇る三隅発電所1号機
立花さんは今年5月に結婚するなど、プライベートも充実。現在は、広島市内で新婚生活を送りながら、1時間ほどかけて中国電力本社に通勤している。
立花さん「休日は、リフレッシュを兼ねて必ず外出しています。買い物が好きなので、町に行くと化粧品などをついつい衝動買いしてしまうのが悩みですね(笑)」
学生時代は陸上部で走り幅跳びを専門に活躍していたこともあり、今でも年に数回ファンランニングに参加する。福岡や愛知のランニングイベントに旅行を兼ねて参加したこともあるそう
公私共に充実している今、最後にこれからどのように働いていきたいか聞いてみた。
立花さん「ワークライフバランスをしっかりと図りながらキャリアを積んでいきたいですね。今、女性の先輩方にいろいろな話を聞いているところです」
電力の供給がメイン業務と思われがちな電力会社だが、発電や送電に直接関わる仕事以外のキャリアもあることを教えてくれた立花さん。今日も石炭灰を使ったHiビーズの伝道者として、地球の環境を守るために奔走している。
★立花美咲さんプロフィール
年齢 |
23歳 |
星座・血液型 |
さそり座・B型 |
趣味 |
ショッピング |
好きな食べ物 |
トマト |
好きな音楽 |
加藤ミリヤ、西野カナ |
好きな芸能人 |
森星 |