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「夜景・環境・観光」を三方良しに!夜景評論家・丸々もとおさんに聞くサステナブルなイルミネーション

2024.12.16

街中を彩るイルミネーションに胸がときめく季節が到来!イルミネーションというと電気をたくさん使うイメージがありますが、サステナブルという考えが社会全体に広がるなかで、イルミネーション自体がどんどん変化しているそうなんです。今回は、夜景評論家・イルミネーションプロデューサーの丸々もとおさんに、イルミネーションの変遷やサステナブル化の取り組みについてお話を聞きました。

 

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夜景評論家・夜景プロデューサー・イルミネーションプロデューサー、一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューロー代表理事の丸々もとおさん

 

イルミネーションは青色LEDの普及で加速度的に進化!

――はじめに、丸々さんの普段の活動内容について教えてください。

一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューローの代表理事として、「夜景」という観光資源を使って街や人を元気にする活動をしています。具体的には、遊園地などの民間施設や全国の自治体でイルミネーションを使ったイベントをプロデュースしたり、さまざまなメディアを通じて国内外に日本の夜景の魅力を発信したりしています。

また、日本各地の美しい夜景を観光資源にしていこうと、夜景観光コンベンション・ビューロー主催で「夜景サミット」を毎年開催しています。夜景観光に尽力する行政や民間企業などが一堂に会して、シンポジウムを行い、夜景の観光資源化の成功事例なども共有しています。地域活性化はもちろん、 “文化”として日本のイルミネーションを広めていきたいと考えています。

 

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夜景観光コンベンション・ビューローが認定する「日本三大イルミネーション」の一つ、ハウステンボス「光の王国」(長崎県佐世保市)

 

――技術の発展と共にイルミネーションも進化しているそうですね。

一番大きな進化はイルミネーションの色です。昔のイルミネーションは、白熱電球による単調な光がメインでしたが、1990年代に青色発光ダイオード(青色LED)が発明されたことによって、赤・緑・青と光の三原色が揃い、何十万、何百万色もの色を表現できるようになりました。

青色LEDが普及し始めた当初は、青や白を基調とした寒色系のイルミネーションが主流に。そこから数年経つと、徐々にカラーバリエーションが増えて派手なイルミネーションが増えていきました。すると、「はっきりとした原色の光は眩しい」という声も挙がるようになって、次第にパステルカラーのイルミネーションが流行りました。現在は、音楽や映像を光と連動させたイルミネーションショーなども人気で、表現の幅がますます広がっています。

 

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東京ドイツ村(千葉県袖ケ浦市)では、幻想的な光と音のショーが大人気
 

また、LEDライトの普及自体も大きな進化と言えます。LEDライトが市場に出始めたばかりの頃は、1球10万円と高価なものでした。2003年頃から中国の工場が大量生産するようになり、100球のイルミネーションが、1万円ほどで手に入るようになりました。LEDライトは、白熱球に比べて寿命が長いうえ、消費電力も10分の1程度。その上、熱を発しないので樹木に巻きつけても傷めにくい。多くのメリットを持つLEDライトの普及によって、全国各地でイルミネーションを用いたイベントが増えていきました。

 

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アパリゾート上越妙高(新潟県妙高市)では、グラウンドイルミネーションとして「光の地上絵」をLEDライトで表現

 

使えなくなったイルミネーションを回収して資源循環

――社会全体でサステナブルな意識が拡大しています。イルミネーション業界においてはいかがでしょうか?

東日本大震災による電力不足を経験し、サステナブルの意識が世界的に広がる中で、「イルミネーションはどれくらい電気を使っているんだろう?」と関心を持つ方が増えていると感じます。LEDライトの使用による消費電力の削減が進んではいるものの、際限なく電気を使い続けるのはどうなのか。今一度立ち止まって考えなければならない、大きな転換期に入っています。夜景観光コンベンション・ビューローとしても、夜景・環境・観光が三方良しでなければならないと考えていますし、夜景観光に携わる方々の関心も非常に高まっています。

 

――実際に、サステナブルな取り組みも始まっているのでしょうか? 

2年ほど前から、夜景観光コンベンション・ビューローでは、廃棄されるイルミネーションを回収して資源にするリサイクル事業を始めました。LEDライトは長寿命とはいえ野外で使うため劣化しやすく、これまで壊れてしまった場合は全て廃棄されていました。そこで、我々が廃棄物処理会社と協力して使えなくなったイルミネーションを無料で回収し、導線の中から銅を取り出しているんです。そして、取り出した銅の対価から経費を除いた額を、回収した施設に還元しています。このリサイクル事業自体は、ビジネスとしての収益はありませんが、夜景観光業界においてサステナブルな取り組みを盛り上げたいという思いで行っています。

 

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これまで廃棄されていたイルミネーション

 

消費電力量は従来の5分の1!環境にやさしい「ECO Illumination(エコイルミ)」を開発

――今までお金を払って廃棄していたものが逆にお金になれば、新しいイルミネーションを購入する資金にも充てられますね。

そうなんです。多くの場合、廃棄した分の電球を購入し直すことになりますが、その際に、環境にやさしい「ECO Illumination(エコイルミ)」の導入をすすめています。エコイルミとは、夜景観光コンベンション・ビューローが開発した低消費電力型LEDライトで、一般的に普及しているLEDストリングス(紐形状)の消費電力が1本(10m 100球)で約5ワットだったのを、同じ明るさで約1ワットにまで削減しています。これによって、今までと同じ規模のイルミネーションが5分の1の消費電力で実現できるようになりました。

 

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「ECO Illumination」を点灯した様子。約1ワットの消費電力で約5ワットの明るさを担保できるよう、1年かけて開発された

 

イルミネーションを売りにする施設は、どうしても「電力の無駄使いだ」と批判的な目で見られてしまうことがあります。イルミネーションのリサイクルに取り組み、低消費電力LEDを導入することで環境への影響を最小限にし、それらをしっかりアピールすることが自治体や企業の評価にもつながっています。

例えば、栃木県のあしかがフラワーパークでは、昨シーズンはエコイルミだけを使って大きなツリーを演出しました。広い園内の所々に使うのではなく一か所に集約してエコイルミを使用し、通常のLEDライトとそん色のない美しさを体感してもらうことで、注目度がアップしたと思います。

 

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あしかがフラワーパーク(栃木県足利市)で開催された「光の花の庭~Flower Fantasy2023~」では、エコイルミのみを使用してツリーを演出

 

SDGsのモデル都市である北九州市では、市内にある駅周辺のイルミネーションの大半をエコイルミに替えています。エコイルミを使っていること自体が、「環境に配慮した施設・自治体」として、差別化のポイントにもなっているようです。

 

2024年注目のイルミネーション5選

きらびやかな世界を味わうだけでなく、環境配慮も進む現代のイルミネーション。この冬おすすめのイルミネーションイベントを丸々さんに教えてもらいました。

 

【神奈川県】江の島サムエル・コッキング苑
2024年11月23日(土)~2025年2月28日(金)
江の島・片瀬海岸エリア一帯が鮮やかな光で彩られる、「湘南の宝石 2024-2025」を開催。湘南の夜空と自然を生かした透明感あふれる宝石のようなイルミネーションが楽しめます。

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<丸々さんのおすすめポイント>
「満天の星を彷彿させる演出が素晴らしい!通常10mに100球の明かりがついているイルミネーションを、あえて10mあたり1〜2球と大幅に間引いて屋外に張り巡らすことで、宇宙の星々のような奥行きのある空間を表現しています。アイデアでエコを実現していると言えますね」

 

【栃木県】あしかがフラワーパーク
2024年10月18日(金)~2025年2月16日(日)
「光の花の庭 Flower Fantasy 2024-2025」を開催。広大な園内を彩る500万球を超えるイルミネーションは、過去にインターナショナルイルミネーションアワードにおいて全国1位に選ばれたことも!

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<丸々さんのおすすめポイント>
「フラワーパークという施設名の通り、光と花のコラボレーションは圧巻。広い園内を生かし、光のバランスを差し引きした陰影のつくり方にも注目です」

 

【静岡県】御殿場高原 時之栖(ときのすみか)
2024年10月11日(金)~ 2025年3月9日(日)
日本で最も富士山に近い大規模イルミネーション時之栖イルミネーション2024-2025「ひかりのすみか」を開催。幻想的なランタンが取り囲むシンボルツリー、約300m続く光のトンネル、噴水レーザーショーなど見所が満載。

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<丸々さんおすすめポイント>
「電球の数をうまく間引きながら闇の部分をつくり込むなど、メリハリをつけることで明るい部分のインパクトを持たせています。ぜひ実際に足を運んで体験してください!」

 

【愛知県】ラグーナテンボス
2024年11月2日(土)~2025年4月6日(日)
イルミネーションやマッピングショー、クリスマスマーケット、エンターテイメントショーが楽しめる冬季イベント「ラグーナ イルミネーション」を開催。幻想的な雲海とオーロラが広がるイルミネーションで没入感を演出する「Tree in the sky」は必見。

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<丸々さんおすすめポイント>
「ショーと連動する大規模なイルミネーションは見ごたえ抜群。プールの水面に光を反射させ、明かりの数が倍増して見えるイルミネーションなどにもぜひ注目してほしいですね」

 

【沖縄】東南植物楽園
2024年10月25日(金)~2025年5月25日(日)
「沖縄南国イルミネーション2024-2025」を開催。南国沖縄ならではの珍しい植物と美しいイルミネーションの融合が楽しめます。植物園エリアには、エコイルミを使った「南国ECOライツ」が誕生。光を最小限に抑えながらも印象的な空間を演出します。

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<丸々さんおすすめポイント>
「月明かり、炎、蛍の光といった『原始の夜景』をエコイルミで表現しています。南国の植物とイルミネーションが織りなす空間は、この施設ならでは!」
 

独創的なアイデアに溢れたイルミネーションの世界を体感してみよう!

――最後に、Concentの読者にメッセージをお願いします。

ここ20年ほどでイルミネーションの世界は、たくさんの色彩を使って派手に演出したり、装飾エリアを拡大したりと、アグレッシブに発展してきました。今はそれが一段落して、環境に配慮した新しいタイプのイルミネーションをつくり上げていくフェーズに入ったと思っています。そういった意味でも、イルミネーションは今が一番面白いとき。心を打つイルミネーションと環境配慮を両立させるため、「水辺を活用しよう」「あえて暗闇のゾーンをつくって光を引き立てよう」など、各自治体や企業がアイデアを絞り出して新しい挑戦をしています。今年の冬は、今までにないイルミネーションの世界を体感しに、ぜひいろいろな場所に足を運んでほしいですね。

 

【編集後記】
電気(あかり)は、生活を照らす照明の機能だけではなく、イルミネーションのように私たちの心に安らぎや感動をもたらす力があります。今回お話がありました夜景観光コンベンション・ビューローが開発した低消費電力型LEDライトによって、同じ明るさで消費電力量を大幅に減少させている技術も素晴らしいですね。今年も残りわずかとなった今、街には華やかなイルミネーションが点灯し始めていますので、ぜひ、みなさんも友達や家族等と一緒に年々進化しているイルミネーションの世界を体感しに、いろんな場所に足を運んでみてください。

 


丸々 もとお(まるまる もとお)

夜景評論家・夜景プロデューサー・イルミネーションプロデューサー、一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューロー代表理事。1992年『東京夜景』上梓。日本でも唯一無二の夜景評論家として本格的活動を始める。「夜景」の美しさを景観学、色彩心理学などをベースに評論する等、夜景の本質を浮き彫りにする独自の「夜景学」の構築に取り組んでいる。夜景に関する著書は70冊以上。地方自治体など各地で夜景観光アドバイザーを歴任。イルミネーションプロデュースに、「TOKYO MEGA ILLUMINATION」(東京・大井競馬場)、「アパリゾート上越妙高イルミネーション」(新潟)「ローザンベリー多和田」(米原市)「小倉イルミネーション」(北九州)「ハウステンボス」(長崎)等、年間数十カ所を手掛ける。

丸々もとおのスーパー夜景サイト:http://www.superyakei.com

一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューロー:http://www.yakei-cvb.or.jp/

 

企画・編集=Concent 編集委員会


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