日本の絆を電気でつなぐ「特殊な変電所」に突撃取材!

2020.01.29

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第5回は、静岡県静岡市にある東清水変電所へ。発電所は知っているけど、「変電所」って何をやっているところ? 行ってみてわかったのは、日本の「絆」をつなぐ場所だったということ。陰ながら頑張る変電所の真の姿を、Conちゃんがお伝えします!

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Conちゃん、電線をたどる!

きれいな青空が広がる冬晴れのある日、編集部員Conちゃんがいるのは、静岡県のほぼ真ん中にある清水港。

前日、仕事の出張で泊まったホテルでパソコンをつないでいたコンセント。ふと思った。

「この先って、どうなってるんだろう?」

疑問を解決するために、今日はホテルから電線をたどってみることにしたのだった。

これまで、そこそこ電気について勉強してきたと自負するConちゃん。

ホテルにつながる電線(引き込み線)から、電柱に。

そこからつながる電線、電柱、電線、電柱…をたどっていけば、きっと発電所までたどり着くと思っていた。

だんだんと電柱は鉄塔に変わり、町を抜けて山へ。

たどり着いたのは、巨大な鉄塔。その下には大きな建物が。

とりあえずConちゃんは、そこに入ってみた。

「君、何してるの?」

怒られた…。

Conちゃんに声をかけた中部電力の市川さんが言うには、ここは静岡県静岡市清水区にある「東清水変電所」という場所。

その名の通り「変電所」だ。

2013年11月から全設備が本格運用を開始したという、比較的新しい施設で、その敷地総面積は17.1ヘクタール。東京ドームおよそ4個分という広さ。

市川「変電所は、発電所から送られてくる電気の『電圧』を変えている場所だよ。発電所から届く電気は超高電圧。そのまま町に送っても使えないから、いろいろな変電所で電圧を少しずつ下げて、家庭やビル、工場など、それぞれが使いやすい電気にして届けている中継地点だね」

市川「東清水変電所は、中部電力エリアの火力や水力といった発電所から送られてくる電気を、静岡市東部にある町や他の変電所に届けているんだよ。それでこれが…」

市川「27万5000ボルトという超高電圧の電気を7万7000ボルトに下げているんだ。ここで変圧された電気は、地下にあるケーブルを通って、あっちにある送電線に送られていくんだよ」

市川「地面に備え付けられているのは、『ガス絶縁開閉装置』と呼ばれる装置。簡単に言うと、スイッチとブレーカーみたいなものかな」

市川「設備の保守点検をするときには電気の流れを止めることができるし、送電線につながる設備に故障があったときには故障したところに流れてしまう大きな電流を瞬時に止められるんだ。だから変電所は、電圧を変えて電気を送りながら、発電所から町までの間の電気の流れを安定させる役割も担っているんだね」

市川「もちろん、防水やホコリ防止の対策は、機械自体に設計されているから大丈夫。とはいえ、本来はホコリや汚れに弱い機械なんだ。それでも外に置いてあるのは、発生する熱を冷やす方が重要だから。無骨に見えるけど、けっこう繊細なものなんだよね」

市川「ちなみに、どの機械も茶色かったと思うけど、それにも意味があるんだよ」

市川「ここから北東にそびえる富士山のことを考えてるんだ。清水港の西側にある日本平から富士山を眺めると、東清水変電所が目に入ってしまう。だから、景観を損なわないように、施設の大型機器は、すべて山の地肌と同じ色にして作ったんだよ」

市川「それに、当時、ここは山を削って建設したから、地滑り対策もしなきゃいけなかったんだ。自然への配慮も考えなきゃということで、山の斜面には、『フリーフレーム工法』っていうものを施しているんだよ」

市川「コンクリートで格子状の枠を造って、山の斜面を覆っているんだ。枠の隙間は山の地肌が出ることになるよね。そうすれば、山の環境もある程度維持できる。建設当時には、土が出ている部分に植樹もしたけど、今では自然に植物が生えるようになったんだよ」

Conちゃん、東清水変電所が持つ別の能力を知る!

変電所がかなり大事な役割を担っていたことを知ったConちゃん。

でも、発電所から送られてきた電気が、変圧器と地下ケーブルを通って、そのまま町まで送られているなら、他にもたくさんある機械や施設はいったい何だろう?

市川「東清水変電所は、実は『変電所』だけじゃなくて『周波数変換所』としての役割もあるんだよ。だから、他のものは、周波数を変換するための設備だね」

市川「家電製品のラベルとかで60ヘルツ(Hz)とか50ヘルツとか目にしたことないかな? あれが電気の周波数。1秒間にプラスとマイナスを行き来する波の周期が、60ヘルツなら60回、50ヘルツなら50回あるという意味なんだ」

市川「まあ簡単に言えば日本の電気は2種類あるっていうこと。静岡県富士川と新潟県糸魚川あたりを境にして、西日本では60ヘルツ、東日本では50ヘルツの電気が使われているんだよ」

市川「これは歴史の話になるんだけど、さかのぼること明治時代。電力事業が初期のころに、西日本の電力会社がアメリカから、東日本の電力会社がヨーロッパから、それぞれ発電機を輸入したんだ。アメリカ製は60ヘルツ、ヨーロッパ製は50ヘルツだった。……で、今に至っているんだよ」

市川「もちろん、これまで統一しようとした動きもあったんだけど、そろえるには莫大なお金と時間が必要で、今に至っているんだよ。ちなみに、周波数の違いは工場の機械に影響がある、って聞いたことないかな? 実際には、モーターの回転で動くあらゆるものに影響があるんだ。身近なところで言えば、ドライヤーや洗濯機」

市川「周波数の違いでモーターの回転速度が変わるから、50ヘルツ用の機械を60ヘルツの電気で動かすと、何かしらの不具合が起きるとされているんだよ。昔は、『東日本で買った家電製品は、西日本では使えない』みたいなことが言われていたけれど、これがその原因。でも、最近あまり意識しなくなったのは、どちらの周波数でもできる限り影響が出ないような製品が多くなっているからって言われているよ」

市川「西と東で周波数が違うって、不便だよね。でも、そろえるのも大変。だから、異なる周波数の電気をやり取りするために、周波数変換設備で50ヘルツを60ヘルツに、60ヘルツを50ヘルツに変えるっていうこと。さっき周波数は“波”って言ったけど、『交流』と『直流』ってわかるかな?」

市川「交流と直流は、電気の流れ方の種類。流れる向きや大きさが周期的に変化するのが交流で、変わらずに一定なのが直流なんだ。例えば、ピアノでドの音をミにしたいとき、どうする?」

市川「そうだよね。似たようなことで、西日本で作られた60ヘルツの波を一度まっ平にして、東日本で使える50ヘルツの波を新しく起こしているんだよ。そうすれば、西と東で電気を送り合うことができるようになるよね」

市川「西から東へ、つまり60ヘルツから50ヘルツで言うと……

……というふうに電気を変換していくんだけど……?」

市川「……直流リアクトルという装置を挟んで、それぞれ60、50ヘルツ用の同じ装置が設置されているから、どちらからでも変換できるんだ。まあ、とにかく周波数変換設備を使うと、西と東で異なる周波数の電気を、双方向で送れるようになるってことだね」

Conちゃん、日本の電気をつなぐ心臓部に入る!

西と東で違う電気を使っていたこと、さらにそれを変換してどちらからも送り合えることにビックリしたConちゃん。

さらに、電気の周波数を変えるための心臓部となる建物の中に入れてもらえることに。

その建物は、60、50ヘルツの変換用変圧器に挟まれたちょうど真ん中。東清水変電所の上空から見ると……

中に入ると、体育館ほどのスペースに、左右対称に並ぶ機械の一群が。

市川「この外側にさっき見た茶色の変換用変圧器があって、突起の部分から電気を送っているんだよ」

市川「これが、交流と直流を相互に変換できる『サイリスタバルブ』。右が60ヘルツ用で左が50ヘルツ用だね。黄色い枠の一つ一つがモジュールと呼ばれる装置になっていて、4つのモジュールで1層、それが4層積み重なっているんだよ」

市川「そのモジュールの中には、『サイリスタ』っていう7枚の半導体素子が入っているんだけど、簡単に言えば、素子の中心に光を当てることでサイリスタがオンになり、電気を通すことができる仕組みを利用して……まあ、周波数が変換できるんだ」

市川「この部屋は温度や湿度などの管理が徹底されたクリーンルーム。常に一定だから、熱くもないし、寒くもない。サイリスタバルブや、外にあった変換用変圧器などを全てまとめて周波数変換設備と呼んでいるんだけど、どれか一つでも止まると周波数変換はできなくなってしまう。だから、どの設備も十二分に管理しているんだよね」

サイリスタバルブの建物を出て、今度は別の建物へ。

長い廊下に左右対称で並んだドアの奥には、それぞれ大型の機械が一定の音を鳴らして並んでいた。

市川「これは『交流フィルタ』。高調波って呼ばれる電気機器のトラブルの元となる周波数のひずみを吸収してくれる装置で、廊下の両側に60、50ヘルツ用が数台ずつ設置されているよ」

市川「よく気付いたね! このブーンって音が、まさに周波数の違い。50ヘルツに比べると、60ヘルツの方がちょっと高いんだ」

Conちゃん、周波数変換設備が日本をつないでいることに涙する!

交流を直流に、さらに直流を交流に変える周波数変換設備が、とにかくすごい機能を持っていることをなんとなく理解したConちゃん。

市川「長野の新信濃変電所、静岡の佐久間周波数変換所と東清水変電所で、合わせて3カ所だけだよ」

市川「新信濃変換所の容量は60万キロワット(kW)、佐久間は30万キロワット、東清水も30万キロワット。だから今は、日本全国で120万キロワット分の電気がやり取りできるということだね」

市川「2007年の中越沖地震のときや、2011年の東日本大震災のときも西日本から東日本に出来る限り電気が送られたんだけど、実は、今の方が大量の電気が送り合われているんだ」

市川「もしも、西日本か東日本で大災害が発生したとしたら、Conちゃんはどうしてほしい?」

市川「それなら、より大量に送り合えるように、送るためのパイプはもっと太い方がいいよね。送れる量が増えれば、東日本大震災のときのような『計画停電』はしなくてよくなるかもしれないし、どんなときでも普段と同じくらい電気が使えるようになるかもしれない」

市川「だから今、西と東の電力融通を強くするために、周波数変換設備の増強計画が進められているんだよ」

市川「新信濃は岐阜県に建設中の飛騨変換所と連系して90万増の150万キロワットに、佐久間は30万増の60万キロワットに、ここ東清水は30万を2機増やして90万キロワットにそれぞれ増強して、全体で2027年度末目途で今の2.5倍の容量、つまり300万キロワットに増やす計画なんだ」

市川「さっきも言ったけど、大規模な災害があった直後は、電気が届かなくなるリスクがあるよね。そうした事態に対応できるためにも、電気を安定して送り届けるという観点から、増強計画が進められているんだ。それに、他にもメリットはあるんだよ」

市川「例えば、周波数が違う東西の電気をもっと取り引きできるようになるなど、経済的な効果も期待できるんだ」

市川「東清水変電所に新しく増設する2台は、2020年4月から工事を始めて、2024年ごろに周波数変換設備を設置、2027年度末目途で全ての運転を開始する予定なんだ。もうそんなに遠くない未来の話だね」

変電所や周波数変換設備は、電気自体を作れるわけではない。けれど、使いやすいように、いつもの生活を変えないようにと、電気を「作る場所」と「使う場所」をつないでいた。

同時に、明治時代に袂を分けた西と東をつなげるなんて……東清水変電所は日本を支える「名バイプレーヤーだなぁ」と感じたConちゃんでした。


取材協力:東清水変電所

住所:静岡県静岡市清水区広瀬
電話:054-366-7261
http://www.chuden.co.jp/


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