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日本の天気って本当に異常なの?気象予報士の手塚悠介さんに突撃インタビュー!

2019.05.15

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第2回は、天気のプロである気象予報士さんに、年々増え続ける異常な気象状況についてインタビュー。「50年に一度の!」「観測史上初!」ってよく聞くけれど、これからの日本は大丈夫?Conちゃんが聞いてきました!

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Conちゃん、大雨の危険性におののく!

Conちゃんが訪れたのは、東京・赤坂のとあるビル。気持ちいい快晴の空のもと、この空模様を読み解くプロフェッショナルに会いにきたのだ。

ビルを上へと昇り、目的のフロアへ。

たどり着いたのは、ウェザーマップという会社。たくさんの気象予報士さんが所属し、気象情報を提供するサービスを行っている。中に通してもらうと、そこで待っていたのが……。

気象予報士の手塚悠介さんだ。

「全国好きな気象予報士ランキング」で2年連続1位になったこともある素敵な笑顔の持ち主で、現在は、テレビ朝日の気象デスクを担当し、各番組のサポートなどを行っている。

手塚「さて、今日は天気について聞きたいということですが……?」

手塚「いきなりですね!でも、少しおかしくなってきているのは確かです。昔に比べると、大きく変わっていることが2つ。それは、雨と気温ですね」

手塚「一つずつ説明しましょう。まずは雨。降水量が年々増えているというわけじゃなくて、降り方が激しくなり、滝のように降る雨の回数が増えているんです。『ゲリラ豪雨』って知っていますか?」

手塚「つまり、突発的で局地的な大雨が増えてきているということなんです。ちなみに、『夕立』って知っていると思いますが、あれも言ってしまえばゲリラ豪雨なんです。でも、『なんだか昔よりすごい』と一般的に認識されるようになってきたので、メディアで『ゲリラ豪雨』と名付けられました。つまり、ゲリラ豪雨自体は日本でも古くからある現象で、今はその激しさが変わったということなんです」

手塚「それに伴って、やはり災害級の雨がとても増えてきているように感じています。最近だと2018年の西日本豪雨、少し前だと2015年に鬼怒川の堤防を決壊させた関東・東北豪雨など、雨が原因になった大きな災害が増えてきています」

Conちゃん、大雨を甘く見て叱られる!

ここ数年、ちょっとおかしいなーくらいに軽く考えていた天気のこと。聞けば、災害級なんて背筋が凍る言葉が手塚さんの口から出てきてしまった。

手塚「近年の雨は、量と期間、両方に問題があると言えます。単に長い時間降ることで降水量が多いケースももちろんありますし、逆に短い時間でたくさん降ってしまって災害につながることもあります。そして土地によっても、雨による災害の影響度に違いがあるんです」

手塚「例えば、広島だと総降水量200~300mmくらい雨が降っただけでも土砂災害の危険度がかなり高まるのですが、一方で、高知だと総降水量が1000mmまで達しても災害があまり起こらないとか。災害になってしまうかは、水はけなど土地の特性も関係するんですよ。なので、気象庁が設定している大雨警報などには地域差があるんですね」

手塚「『50年に一度の大雨』や『観測史上初めての大雨』とは言葉通り、50年に一度起こるか起こらないかの大雨ということです。最近たくさん聞くと感じるのは、昔より情報を集める場所が細分化されているからで、よりピンポイントなデータが取れるようになったからというのも理由の一つとしてはあります。だから、ある場所では観測史上初めての大雨だとしても、少し離れれば普通ということはよくあります」

手塚「その考えは危ないですね。自分の周りで降ってなくても、少し離れた場所では実際に大雨は降っているんです。狭い範囲で起きることだからといって甘く見てはいけません。確かに頻繁に見聞きするようになったので、危険と感じなくなっている人はいるでしょう。でも警報は警報。出ていたら『またか…』とは思わないでほしいです。同じ県内や隣の県で起こっていることは、もしかしたら自分の場所に来るかも、と考えた方がいいと思いますよ。先ほども言ったように大雨の回数が増えてきているという事実もあり、降り方が強くなっているので、『50年に一度の大雨』という滅多にないようなことが頻繁に起こるようになっている。そのような捉え方もできるんです」

手塚「最初に言った2つのうちのもう一つの変化、気温です。温暖化が激しい雨を降らせている原因の一つと言われています」

手塚「豪雨も含めて、『異常気象』というのは、過去に経験した現象から大きく外れていることを『異常』として扱っているんです。具体的には、『30年に一度あるかないか』という現象のことを指しています」

手塚「そして、世界で起こる熱波や大寒波といった異常が起こるのは、『偏西風の蛇行』が大きな要因とされているんです」

手塚「上空を西から東へ吹いている偏西風は、常に南北に蛇行しています。この蛇行の幅が、いつもより大きくなると、異常と思えるような暑さや寒さになるんです。そして、この大きな蛇行の頻度が“温暖化”によって増えるのではないかと言われているんです」

Conちゃん、温暖化が身近で深刻なことに気付く!

二酸化炭素などの増加によって、地球全体の平均気温が急激に上がる現象「温暖化」。それが豪雨や大寒波といった一見関係のなさそうな異常気象にも関わっていることに驚くConちゃん。確かに何となく気温が上がっているなーと思うことはあるけど、いまいち実感できてないのが正直なところ。

手塚「このまま温暖化が進めば、60年くらい先の未来、2080年~2100年ごろには今より気温が3~4℃上がると言われています。そうなると、例えば東京は鹿児島や奄美大島の気候に近くなりますし、仙台は東京のようになるかもしれません」

手塚「気温が上がると、四季の景観も変えてしまいます。桜の開花は、50年に5日くらいのペースで早くなってきていて、2080年には3月中旬ごろの卒業式の時期に満開なんてことになるかもしれません。お茶なら、茶摘みの時期はもともと5月の頭ごろだったのに、静岡ではもう4月の後半には始まっているんです。さらに紅葉は全国的なデータでみると、年々遅くなっていることも分かります。肌感覚で春と秋が短いと感じることがあると思いますが、やっぱりそれは気温が上がってきているからなんですよ」

手塚「さらに言えば、真夏日と呼ばれる30℃以上の日数。これは現在、東京で年間50~60日ほどありますが、50年後にはそこからさらに40日くらい増えると言われています。逆に、冬日といわれる0℃未満の日数はどんどん減る。東京では例年10日前後しかないので、ほぼなくなってしまうと予測されています」

手塚「日本のようにきれいに四季がある国があまりないのですが、ちょっと近いと思うのは、ベトナムのハノイ」

手塚「ベトナムはすごく暑いのですが、北部は四季に近いものがあって、日本の気温変化に似ているんです。ずっと温暖化が続いていけば、そのあたりの気候に近付いていくかもしれません。

極端にレベルが上がれば、インドのニューデリーくらい暑く……いや、正直ないと思いますけどね」

手塚「もちろん、これから20~30年の間では、大きく生活は変わらないですよ。でも、植物や農作物にはすぐに大きな影響が出てくると思います」

手塚「気温が上がっていくと、植物が生息できる範囲が変わるんです。各地で特産品とされる農作物が作りにくくなったり、もしくは作れなくなったりするかもしれません。例えば、ミカン。九州では温暖化の影響で気温が上がってきていて、栽培するミカンが病気になるなど既に影響が出始めているというレポートがあります。なので、暑さに強いデコポンという品種に変えている農家さんもいるそうです」

手塚「もし今の特産品を維持しようとしたら、農家さんは設備投資をしなければならないでしょうし、そうするとコストがかかる。その上、設備を動かそうとすれば、今よりもエネルギーが必要になってくるでしょう。それは、温暖化の原因とされる二酸化炭素をさらに出してしまうことにつながるかもしれないし、結果的にはもっと温暖化を進めてしまうかもしれないという悪循環になるんです。その先には、日本の農業や食料自給率への影響も考えられますし、温暖化の影響で海水温も上がってきているので、水産業にも同じことが言えるでしょう」

手塚「これって、各地の文化が変わってしまうことなんじゃないかと思っています。特産品が変わったり、失われたり。暖かくなれば新しく生まれるものもあると思いますが、今あるものがどんどん少なくなってきてしまうのはさみしいですよね。それを維持するか別の道に進むかの瀬戸際に今、立たされているんだと思います」

手塚「地球規模で考えれば、今よりももっと暑く、もっと寒いときは当然あったので、温暖化が進んだからといって人類が死滅することはありません。ですが、雨の問題も含め、私たちが温暖化によって増えるリスクとどううまく付き合っていくか、それが大事だと思います。個人的には、日本の四季がとても素敵だと感じているので、後世に受け継いでいきたいと思っているんです。今あるもの、自分が経験したものがなくなってしまうのは、やっぱりさみしいですよね」

天気の話を聞きにいったら、温暖化が四季や特産品にまで悪影響を及ぼしている事実があったなんて……。怖い話が多かったので、最後に明るい天気の話題は何かないかと聞いたら、「今の予報精度は、かなり高いですよ!」と手塚さん。今日からもっと真剣に天気予報を見ようと思ったConちゃんでした。


手塚悠介

1982年11月2日、埼玉県出身。気象予報士。2013年3月に気象予報士資格を取得し、2014年3月よりウェザーマップに所属。2014年から静岡第一テレビで天気キャスターを3年半務める。2018年春からは放送局番組サポートをしながらTBSニュースバードに出演。現在はテレビ朝日の気象デスクを担当している。