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花見にも影響あり?地球温暖化が私たちのライフスタイルを変えるワケ(前編)

2018.11.09

今、日本のエネルギー事情がどうなっているのか、最前線で活躍する先生が分かりやすくレクチャーする「エネスタ!」。第2回も前回に続き、日本エネルギー経済研究所の小川順子先生と、理系女子大生の大野南香さん、読者モデルの高橋晴香さん、働く女子の多田恵さんがディスカッション。話は日本を超えて、地球全体の問題へと広がります。地球温暖化をきっかけに、エネルギーについて一緒に勉強しましょう!

※【第1回】の記事はこちら


先生「前回は日本のエネルギー問題の観点から、エネルギーのベストミックスの必要性についてお話ししました。今回のテーマは『地球温暖化』です」

高橋「それなら分かります! 二酸化炭素が増えて、地球の気温が上がっている問題ですよね」

大野「でも、冬にすごく寒い日があると、本当に温暖化してるの?って思うこともあります」

先生「昔から叫ばれていますが、どこか実感しにくいところがありますよね。それもそのはず。実はこれ、将来の地球に関する問題だからなんです」

多田「今の問題じゃないんですか!?」

先生「もちろん、すでに影響は各地で起きています。二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスは、熱を吸収しやすい性質を持っていて、濃度が地球全体で高まると、地球が温まりやすい状態になります。地球温暖化は、この温室効果ガスの排出が原因である可能性が極めて高いとされています。地球が今よりも暖かくなると、さらにさまざまな不都合が起こり始めるんですね。そして、温室効果ガス排出増加分のほとんどは人間の活動が原因とされているので、つまり私たちのエネルギー問題と言えるんです」

多田「人間の活動って、どういうことですか?」

先生「私たちは産業革命以降、化石燃料を燃やしてエネルギーを作り、繁栄してきたと同時に、二酸化炭素を多く排出してきました。長い歴史の中で見ると、産業革命以降から現在までの200年ほどで、二酸化炭素の量が急上昇していることも明らかになっています」

大野「人類の急激な発展が原因ですか……」

多田「実際、温暖化はどのような影響があるんでしょうか?」

先生「北極やグリーンランドなど各地の氷河が減少しています。また海水の温度が上昇して膨張し、海水面が上昇。小さな島国では海岸侵食の被害を受け、移住するケースもあります」

大野「ツバルの話を聞いたことがあります。国全体の海抜が低く、海面が上昇してしまうと、国が丸ごと海に沈んでしまう可能性があるって」

高橋「日本ではどんな影響があるんだろう?」

先生「身近なところでは、春先の気温の変化にともない、桜の咲く時期が早まったりしていますよ」

多田「桜にも影響が?」

先生「私が東京で学生だったころは、4月の入学式のころに開花していましたが、今は早い場合だと3月の卒業式の時期ですよね」

多田「確かに、昔に比べてだんだん開花宣言が早くなってる気がする!」

先生「これも温暖化による気温の上昇が原因だと考えられています」

大野「でも、きっとこれ以上温暖化しないよう対策も取られているんですよね?」

先生「日本は資源が限られているので、それをいかに効率的に使うかが重要視されています。そのため、徹底した省エネルギー(以下、省エネ)が推進されているんです。省エネによってCO2の排出が抑制され、地球温暖化問題の解決にもつながっていきます。日本はこれまでも省エネに取り組み、世界でもトップクラスを達成してきましたが、今後も、さらなる省エネを進めることが必要です」

大野「省エネって、やはり重要なんですね」

先生「また、再生可能エネルギー(以下、再エネ)や原子力発電の活用も推進されています」

高橋「なんで再エネや原子力が必要になるのですか」

先生「実は日本では、東日本大震災以降、温室効果ガスの排出量が増加しています。このうち、電力分野における2016年度の排出量(エネルギー起源CO2)は、原子力発電の長期停止などによって、2010年度と比較すると5,400万トンも増加しました」

●日本の温室効果ガス排出量の推移


出典:経済産業省資源エネルギー庁「2018―日本が抱えているエネルギー問題」より

先生「次のグラフを見ると分かるように、再エネや原子力発電は発電時にCO2を排出しないことから、CO2削減のためにも、今後いかに活用するかがとても重要になってきます」

●日本の電源種別ライフサイクルCO2の比較


出典:電気事業連合会「エネルギーと環境2017」より

大野「本当だ。省エネも、再エネも、原子力も、地球の温暖化対策とつながっているんですね」

先生「その通り!でも、日本だけが頑張ったところで……という問題もあります」

3人「???」

先生「このグラフを見てください」

●各国別の温室効果ガス排出量割合


出典:経済産業省資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」より

先生「世界の二酸化炭素排出量を見ると、中国、アメリカ、EU、インド、ロシアで約6割。日本はたったの約3%。日本だけが削減しても、その影響は限られます」

多田「では、どうしたらいいんですか?」

先生「だからこそ、世界全体で対策することが必要なんです」

高橋「対策というと?」

先生「2015年に開かれた国際会議(COP※21)では、途上国を含む全ての参加国に排出削減の努力を求める『パリ協定』が採択されました。パリ協定では、世界の平均気温の上昇を2℃より十分に下回る水準に抑制、また、1.5℃以内に抑えるよう努力することが掲げられています」(※国連気候変動枠組条約における締約国会議)

多田「日本も参加しているんですか?」

先生「はい。日本は中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出を、2013年度の水準から26%削減することを目標として定めています。実は、温暖化は自然への影響にとどまらず、やがては人命に対する脅威にもなるんですよ」

大野「異常気象で田畑が被害にあって、食料不足が起きるとか?」

先生「その先が続きます。例えば、シリアでは異常気象による大干ばつで150万人が職を失い難民化しました。彼らが都市に流入したことで政情が不安定になり、内戦が発生。その間にテロ組織が台頭していき、国はさらに混乱していったんです」

多田「巡り巡ってテロ組織にまでつながるなんて……」

先生「特に日本だと、普段は便利で快適だし、気付くことは難しいですよね」

大野「けれど、対策しなければ、悪化するばかりですもんね。人口と経済を縮小させずに、どうやって温暖化を止めるのか……うーん」

先生「本当に難しい問題に直面しているんです。その中でも、日本は頑張っている方だと思います。ちなみに今、国内総生産(GDP)の世界ランキングで日本は何番目か知っていますか?」

大野「上からアメリカ、中国、ロシア、で、日本ですか?」

先生「正解は、次回にお話ししましょう」

後編に続く

<profile>

小川順子(おがわ・じゅんこ)

財団法人日本エネルギー経済研究所・地球環境ユニット地球温暖化政策グループ研究主幹。専門は地球温暖化政策分析や省エネルギー政策分析。1997年に入所以来、国際エネルギー経済学会やエネルギー資源学会、セミナーなどを通じてエネルギー問題の理解促進に尽力する。

大野南香(おおの・みなか)

1999年3月生まれ、愛知県出身。東京大学教養学部理科二類2年。東京大学2017年準ミスグランプリ。趣味は弾丸旅行や料理。今回は理系女子の視点からエネルギー問題に斬り込む。

高橋晴香(たかはし・はるか)

1989年1月生まれ、東京都出身。読者モデル、インスタグラマーとして活動。特技は卓球やジャズダンス。電気料金や節約術などエネルギーのあれこれを今どきの女子目線で問う。

多田恵(ただ・めぐみ)

1986年生まれ、千葉県出身。雑誌編集者。趣味は旅行や最新グルメ巡り。今回は働く女子代表として参加し、気になっていたエネルギー関連のニュースなどへの疑問をぶつける。